内容説明
紀元前4世紀、わずか10年余でギリシアからインドに及ぶ大帝国を築き上げたアレキサンダー大王。その少年時の師は哲人アリストテレスであった。いかなる劣勢、いかなる謀略にも屈しなかった最強の武将の真の姿とは? 勇気と知性と一途な夢をもって駆け抜けた波瀾の生涯を圧倒的スケールで描く長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
76
阿刀田さんの大長編の1冊です。アレクサンドロスの生涯についてその人物を取り囲む人々などと一緒に話は進みます。阿刀田さんの手にかかると大昔の人物ながら生き生きとした姿でよみがえります。ほかの書物や映画でも見てよく知っていましたのでスラスラ読むことができました。ただ、コミックの「ヒストリエ」の主人公エウメネスが出てこないのが少し残念。2015/07/11
NAO
74
アレクサンドロスの幼い頃からのさまざまな逸話や戦での華々しい活躍ぶりは、神とも見まがうほどだ。運までをも味方につけて、何一つ恐れることなどないかのようだった。こういった活躍で彩られている数年間はおもしろく、ぐいぐいと引き込まれていく。だが、いつまでも遠征と戦を繰り返すうちに、武将としてはそれでもいいが王としてはどうなのだろうという疑問を感じるようになる。アレクサンドロスにとって何よりの幸運は、身内に裏切られる前に亡くなったことだろう。それも、戦に破れてではなく、病死。それこそが、神の恩寵ではないだろうか。2020/01/03
seacalf
43
世界史の中でもとりわけ燦然と輝く大王アレキサンダー。大樽のディオゲネス、ゴルディオンの結び目、モザイク画で有名なイッソスの戦い、有名なエピソードは数知れず。しかし、読み進めているうちに侵略を繰り返す進軍にこだわる意味や大義名分が理解しにくくなってくる。学生時代は単純に好きだったんだけどなあ。作者の解釈も多分に含まれているからかもしれないが、すっきりせず。湍水、嚆矢、蟠踞、瞋恚、灌奠、轅、股肱、開豁、狭隘、輜重、内訌、使嗾、扈従、祇候、船渠、蕭条。読めない漢字のオンパレードで自身の漢字力の無さに泣ける。2020/06/11
サロメ
11
アレクサンドロス大王の幼少期から死までの物語。久しぶりに時間を忘れて歴史小説を読んだ。史実や歴史的背景を十分理解し、それをうまく物語に摺り込みながら人物を描くので、たぶんそんな人だったんだろうなぁと違和感なく、物語に入るこむことができる。 資料集(東征の地図)を片手に大王の足取りを追いながら読むと面白かった。歴史書ではないため進路や攻略した町、政策など多くの部分が省かれてはいるが、アレクサンドロスという「人」を通して眺めることで、東征の困難さ、偉大さが身近に感じることができた。2012/02/12
mitsu44
10
大長編でした。獅子王と呼ばれたアレクサンドロス大王の一生を描いた本。アレクサンドロスはマケドニア王の王子として生まれ、類稀なる才能と武力でマケドニアからギリシア、エジプト、ペルシア、インド西岸と広範囲を短期間で手中に収めた英雄である。32歳の若さで太く短い生涯を終えると残ったのは権力争いだった。プトレマイオス朝エジプトを築いた朋友プトレマイオスが著名。アレクサンドロスの人間性や様々な人の感情、紀元前の話をこれほど色濃く物語にしているところがすごいと思った。2018/11/07