内容説明
「この小説のために文字通り骨身をけずり、今日の痛みをしのがねばならなかったのか」。作者最後の長編小説であり、純文学の奇跡と今もなお絶賛される『深い河(ディープ・リバー)』は、壮絶で苛酷な闘病生活のなかから生み出された。1990年8月26日から1993年5月25日まで、小説と死を見つめ続けた感動の軌跡。(講談社文庫)
目次
『深い河』創作日記
宗教の根本にあるもの
後記 加藤宗哉
対談『深い河』創作日記を読む 三浦朱門×河合隼雄
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayan
16
「深い河」読了から随分時間がたって手にした。遠藤は本書で「…どのような宗教であれ、その根底にあるものは一緒なのであり…同じ頂を目指して北から上がるか、南から上がるかの違い」と言う。頭で理解を試みるも、心で感じる事ができない。アルジェリアで日々コーランを研究しイスラム教徒と良好な関係を築くも最後は武装イスラム集団に拉致殺害されたアトラス修道院の事件、そして先日読み終えたThe Last Girlで突きつけられる現実を目の前に「何が一緒なのか、どこが同じ頂なのか」など疑問が尽きない。遠藤の理解に至る道は長い。2018/12/06
桜もち 太郎
11
最後の大作「深い河」の創作日記。遠藤が亡くなってから発見されたものだ。友人の三浦朱門が言うように「いかがわしい」「見せびらかす」「言わずにはいられない寂しさ」との思いがあったようだ。日記の中で「とにかく一枚でもよい、書き出せば始まるのだ。それはわかっているのに」と体力の低下と思うよう書けない焦りが垣間見える。順子夫人の「夫の宿題」にもあるように、医師による致命的な誤診があったようだ。その生死感や宗教観が無意識にペンを走らせたのではないだろうか。→2015/03/17
紫羊
9
遠藤周作は若い頃に結構読んだ。個人的な信仰の問題を抱えていた時期でもあったので、特に「沈黙」には心の奥まで抉られた。社会人として何とかやっていけるようになると、遠藤周作の小説が重苦しく感じられるようになり、エッセイ以外は全く読まなくなってしまった。でも、最近になって、「深い河」は絶対読んでおきたいと思うようになり、手始めに創作日記を読んでみた。自ら死を意識しながら、生涯最後の大作に取り組む作者の、真摯かつ人間くさい生きざまに圧倒された。2013/09/03
Junius
4
「深い河」が「宗教的多元主義」に影響を受けてできたこと、知らなかった。専門的な内容だと思うけど、ヒックの本も読んでみたくなった。2015/01/20
kwy8791
2
先日読んだ『笑って死にたい』に触発されて10年くらいぶりに読んだ。おいに伴う身体の不調に対する絶望感が随所に書かれている本。 なのだけど、文庫版後半に収録された三浦朱門と河合隼雄の対談を読むと、あぁそんな見方もあるのかと。世の中はもっと斜めに見ていかねばならないんだなぁと思い知らされもした一冊。2013/10/05