内容説明
帰らない母を案じて眠れぬ一夜を明かした塩月令子は、後ろ髪引かれる思いで出社し針谷警部から凶報を受ける。駆けつけた千葉県銚子の霊安室で令子を待っていたのは、変わり果てた姿で横たわる母と耳を掩いたくなるような事実だった。その朝、屏風浦で数十メートルの断崖から海に落ちた車が見つかり、同乗四名の遺体が収容された。その一人が外ならぬ母であり、現場の状況から単なる事故ではなく謀殺に違いないというのである。懸命の捜査にも拘らず被害者間の交友関係は確認できず、容疑者はおろか動機すら判然としない。いったい誰が、何のために? 令子は自力で真相を追うが……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
64
〔再読〕天藤作品といえば、その設定の奥深さや意外性に毎回驚かされる。物語は崖下から引き揚げられた車に、四人の男女の遺体が見つかる。問題はこれが殺人事件であり、四人の間には全く繋がりが見られない事である。ミッシングリング、隠された繋がりを捜すミステリと思ったのだが、いやいや天藤作品はそれでは終わらない。主人公の成長する姿を描き、人々の悲哀や笑い、優しさやどす黒さと人間観察の細やかさがある。アッと驚かされる視点の死角は、ミステリの基本的考え方を思い出させてくれる。ただ主人公が、好きになれなかったのは残念だ。2017/12/09
たか
50
【再読】 崖下から引き揚げられた車に、4人の男女の殺害遺体が見つかる。4人の間にはなんの繋がりもなく、殺害される動機のある者もいない。その中で遺族の一人が探偵となり他の遺族とも協力しながら犯人を捜していくのだが…。▼ 隠されたミッシングリングを探していくのかと思いきや、ストーリーは思わぬ方向へ進む。 ラストは、心理の死角をついた真相。まさに『死角に消えた殺人者』 少し背筋が凍る思いがした。C評価2024/10/14
coco夏ko10角
26
大破した車の中にあった四名の遺体、その四人のつながりは?そのうちの一人が母親であった令子はなんとか情報を得ようと頑張るが…。この令子が良くも悪くも素直な上にぽんぽん行動に移すのでちょっとハラハラする。しかしそれが終盤につながっていくのだなと。今回も面白かった。2020/11/15
geshi
24
主人公である令子の自己中さは好き嫌いはあるとしても、真っ直ぐで気丈で騙されやすくて危なっかしいキャラクター造形がリーダビリティになっている。天藤さん作品の中ではユーモアが少なく人間のブラックさを表に出しているが、令子の助けとなる人達の優しさが安全網として用意されているのは天藤さんらしい。令子が母親の死を通して色々な人達の悪意や計略にさらされながら成長していくプロット自体が一種の叙述の罠であり、最後に真犯人の意図を見抜くまでになる、成長譚とミステリーの合わせ技が巧い。2015/06/03
Tetchy
9
正に天藤ワールドのエッセンスが詰まっているのだが、どこか空虚な感じが残っており、充実感がない。それは今回の主人公は決して読者の共感を得る存在ではないからだろう。また、死んだ母親が令子の導き手として頻繁に出てくるのはどうしたことだろうか?作者も年を取り、ある意味、独特の死生観を持つに至ったのだろうか。これが結末にも演出として使われていたのは逆効果で、温かい余韻を持たせようという作者の魂胆が見え、私にはあざとく感じたのである。2009/06/28




