内容説明
原子炉の爆発がきっかけで、双子の姉妹・華織と紗織は別々の家に預けられた。しかし失意の華織は自殺の名所とも呼ばれる放射能汚染地域へと自ら踏み込んでしまう。立入禁止の汚染地域で生き長らえる華織、非汚染地域で暮らす紗織、互いに相手を強く求めながらも、決して満たされることのない日々は、ついに意外な結末を迎えた……。第4回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の『D‐ブリッジ・テープ』に続き、世界の果てに佇む孤独な魂の反抗と狂気を、まったく斬新な表現方法で描いたホラーワールド。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じゅんぢ
29
俺的10大傑作角川ホラー文庫の一つ。双子姉妹の再会のシーンで物語が終わってれば良かったのに。2017/04/17
taku
11
世界は憎らしいほど鈍くて、呆れるほど忘れ去っていく。原発事故で隔離された汚染地域、ハーフムーン。震災前の作品。背景はしばらく掴みづらいが、淡々とした悲壮感の組み立ては悪くない。少年少女たちを通して、理不尽な社会への痛みと叫びを抑えて描き、最後に爆発させる。崩壊する閉塞された楽園。胸が締めつけられる感覚を味わった。どこかで起きている悲劇は遠い。物理的な距離ではなく自分との関わりにおいて。ホラーではないよな。ライフルが突っ込みどころ。2019/09/07
gelatin
7
★★★★★ (ホラーです)「自分を表す10冊」の本棚を作ろうかなと思ったときに外せない1冊。沙藤一樹の中でもこれがベスト。ミリ単位の方眼紙を一マスずつ埋めていくような情景描写で、原発爆発後の残酷な世界を味わう。激しい暴力とグロテスクさを包む静謐。実際に原発は爆発し、これを完全なるフィクションとして楽しむことはもうできない。2017/07/20
有智 麻耶
6
「星は星のままだろーーそうそう変わりはしないさ。要するに、見る側の問題だよ」(p.112)「人と人との関係は、殺す-殺される、っていうところまで行き着く可能性があるーーそれにもかかわらず、どうして、かつてのおれは平気で人と接していたんだろうな」(p.340) やはり傑作。読むと辛いのは分かっていながら、また読んでしまうんだろうな。2014/06/28
KsK
4
『Dブリッジテープ』に続き読了。作者の描く、ディストピアでもがき苦しむ人間は素晴らしい。残酷で不条理な世界に向けた敵意が強烈な印象を与える。原発事故前に書かれたということに驚き。2020/07/22