内容説明
円を掘りに来る街。それがイェンタウンだ。日本人はこの呼び名を嫌い、自分たちの街をそう呼ぶ移民たちを逆にイェンタウンと呼んだ。ヒョウとリンとフニクラは墓荒らしで小金を稼ぎ、グリコは売春で生計を立て、身寄りのないアゲハを引き取った。ある日、客のひとりがアゲハを襲い、隣人のアーロウが客を殺してしまう。すると腹の中からテープが飛び出し、代議士のウラ帳簿が見つかる。飽和状態のイェンタウンで、欲望と希望が渦巻いていった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
*maru*
33
岩井俊二初読み。この映画が大好きだった。 イェンタウン。私が夢中になった街。その街で暮らす個性豊かな人達。映画と小説で内容が違う理由を岩井氏自らあとがきで述べているが、映像には映像の良さが、小説には小説の良さがある。企画書代わりに書かれたという“メモ”でこれほど完成度が高いとは驚きだ。YEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」「My Way」をBGMに、懐かしさに胸踊る至福の読書だった。そして、久しぶりに映画が観たくなった。2017/10/08
背番号10@せばてん。
29
1999年3月31日読了。96年公開の映画の主なキャストは、三上博史(当時34歳)CHARA(当時28歳)伊藤歩(当時16歳…若!)。あらすじはもちろん、忘却の彼方。1999/03/31
ゆめ
29
様々な事情を抱えながら円を求めて世界中から集まった移民が入り乱れる、架空都市円都(イェンタウン)。国籍も両親の行方も自分の名前さえわからない12歳の少女は、その街で娼婦グリコに拾われ円都の裏社会へと巻き込まれていく。麻薬、密売、売春、窃盗、殺人。胸に蝶のタトゥーを入れたときに立てた誓いの通り、どんなときでも真っ直ぐであろうとする彼女の姿勢が素敵。序盤は口数が少なくて個性は決して強い方ではないのだけれど、中盤から後半にかけてからはリンの存在感と魅力がすごい。おいしい役所。2014/02/23
いわし
21
イェン・タウン・バンドの『モンタージュ』をBGMに。岩井俊二は僕の青春だった。監督として原作・脚本・編集、時には音楽まで手掛けるセンスとこだわりを信頼していたし、特に映画『スワロウテイル』は作り込まれた世界観に引き込まれ、DVDで繰り返し観た作品である。映画はほとんど観ることがなくなってしまったけど、CHARAの気怠い歌声が15年くらい前の感性を呼び戻してくれて、感傷に浸りながら最後まで楽しめた。ただ映画の原作というよりは原案という感じで、映画とはかなり違うので要注意。やはり岩井俊二は映画の人という印象。2020/05/02
ナチュラ
20
だいぶ前(20年前)に映画を観ました。小説を読むと映像が浮かんでくるようだった。近未来のような、パラレルワールドのような円都(イェンタウン)が舞台。また映画の方も観たくなった。 グリコ役はCHARAがぴったり合ってたなぁ。 小説は映画よりコミカルに感じられた。 美しく儚い 岩井俊二監督の世界観が詰まっている。 2016/08/16