内容説明
小田原の魚屋の息子に生まれたが、文学への夢が捨てきれず家督を弟に譲って上京するも、小説家として一本立ち出来ずに郷里に逃げ帰る。そんな前半生と売れない老残の作家の娼婦との交遊が、地べたを這うような低い視点からの一種の諧謔味をおびた川崎文学をつくりだす。本書は「鳳仙花」「乾いた河」などの代表作のほかに中山義秀との交友を描いた「忍び草」など7篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
三柴ゆよし
18
バタ臭い小説ばかり読んでいるとたまにはこういう麦飯じみた小説も読みたくなるのが道理だが、実のところ、川崎長太郎という人は、枯れたような作品ばかり残しているわりに、自分の師匠だろうと友人だろうと情婦だろうと、案外に容赦のない舌鋒を見舞う人だったりする。そんな人間だからこそ書けた傑作が本書所収の「父島」であり、ここでは、バタ屋の虱たかりの独身じじいと侮られる、孤独な徴用人足生活のなかにあっても、地べたを這いずるように生きていく主人公のすがたが、いくばくかの哀愁を交えつつも、異様な迫力でもって描かれている。2012/08/21
hasegawa noboru
15
講談社文芸文庫化されたのは、作者死後13年の1998年で読んだのはその2011年第二刷発行版。1935年「故郷の消息」から1976年の「冬」までの八篇が収められている。<「地べたを這いずりまわっているような、身も蓋もない生き方が描かれているが、川崎文学はそれだけではない>との澁澤龍彦の評を紹介しながら、巻末の川村二郎の解説は<構えのない受け身の人、川崎長太郎は>破局をわが身に招いた同郷の作家牧野信一(「冬」の主題)に比して<陋屋に逼塞しながら、地上一寸の生のなつかしい牧歌を紡ぎだして見せた>と褒める。2026/01/23
とうゆ
14
一言で言うなら穀潰し。売れない文章を書くことだけを生業とし、妻も取らず、仕事もろくにせず、挙げ句の果てには弟夫婦のやっかいになる様なだめ人間。しかし君には文学というよりどころがあるだけいいじゃないかと思ってしまうのは、ひねくれすぎだろうか。2014/09/26
YO)))
14
私小説の極北、と言われているが、然程ヘヴィメタルな感じはせず、時に剽げた、とも言えそうな、妙に突き放した語り口が、何とも末枯れた味わいで兎に角読ませる。同郷の牧野信一との交流を書いた「冬」、これは読めてよかったなあ。「創作は宇宙へ出す手紙である」だなんて、如何にもマキノ氏らしい素敵な言い種だけど、畢竟飛翔には墜落が付き物であって、飽くまで現実の中を生きて書いた(そして天寿を全うした)川崎氏との、此方彼方の分かれ目を見たように思ったり。「超低空をとぶ人」の強さ、でもあろうか。2014/02/06
fseigojp
12
これも志賀の系統というべき心境小説家2015/08/27
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