内容説明
山霊がつかわした青年、長身清眉の介推は、棒術の名手となって人喰い虎を倒した。やがて、晋の公子重耳に仕え、人知れず、恐るべき暗殺者から守り抜くが、重耳の覇業が完成したとき、忽然と姿を消した。名君の心の悪虎を倒すために……。後に、中国全土の人々から敬愛され神となった介子推を描く、傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
93
宮城谷昌光の作品の中では、特に好きな1冊。介子推は、晋の公子重耳に仕え、棒術の名手としてテロリスト閹楚から守り抜き、食うや食わずの道中では食糧を調達すべく死に物狂いで走り回り等、人知れず行われたことで重耳は知る由もない。無私の精神で動いた彼は、理想的な君主と信じていた重耳も欲望の論理で動く君子と知り、失望し母と共に、山の隠者となる。著者の介子推への深い共感と共に、純真さを失うことなく、権力者となった重耳にあえて異議を唱えた生き方の軌跡をさわやかなタッチで描き切った力作で、介子推への強い思いを感じる。2023/06/01
遥かなる想い
88
『重耳』が面白かったので、重耳の中の登場人物「介子推」を描いた本書を読んだ。棒術の名手「介子推」が苦労する重耳を助け、重耳が成功すると姿を消す、という武士道にも繋がるような感動の本。後に神として敬愛された人物らしい。2010/06/12
KAZOO
67
重耳からのスピンアウト作品ですね。このような作品の創り方も司馬さんと同じような感じがします。一つの大きな作品を書くとそれに関連した人物を調べ上げてもう一つの作品を作り上げる。この介子推という人物は重耳をまもるために天から遣わされたような感じです。重耳が覇業を遂げるといなくなりどこかで、彼を守っているということで本当に清廉潔白な人物だということです。伝説でもいい話ですね。2015/05/07
スター
49
宮城谷昌光の三国志があまりに面白いので、たまたま寄った本屋で見つけた本書を読む。三国志での独特の文体ではなく、もう少し普通っぽい文章です(笑)。 あの独特の文体が好きなのですが、こちらも良き。晋の公子重耳に仕えた介子推の半生を描いた作品。 前半あまりはまらないかと思いきや、中盤から面白くなり、作品世界を堪能しました。著者の先行作品である重耳も読みたいです。 2019/12/14
Tomoichi
23
資料の少ないこの作品の主人公をよくここまでの小説に仕立てあげたなと思える娯楽長編。まだ読んでいないが「重耳」のスピンオフ作品と言えるのでは。しかしながら、のちに中国人から敬愛され神となった「介子推」の物語なので中国人の考える理想像を考える上で重要な小説と言えます。2017/02/03