ちくま文庫<br> 新装版 消えた鼓動 ――心臓移植を追って

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ちくま文庫
新装版 消えた鼓動 ――心臓移植を追って

  • 著者名:吉村昭【著】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2015/08発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 240pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480034014

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内容説明

医療だったのか、殺人だったのか――深い疑惑につつまれる「和田心臓移植事件」の全貌。札幌を基点とし、南アフリカ、アメリカでの綿密な取材を背景に、犀利な作家の眼によって「事件」を克明に描きつつ、医師のモラルを告発し、人間性の所在を証言する迫真のドキュメント。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

キムチ27

46
吉村氏の「神々の沈黙」という小説がある。48年前、当時大きな反響を呼んだ札幌医大心臓移植手術。執刀者和田教授の名前は記憶に残っているが事実は暗部に沈んでしまったかの様。この作品は吉村氏自身、創作レポートと銘打ち、小説で書きつくしたはずが自らに再度問いかけ考えてみたくなったの想いで世に出されたものとある。小説自体、当時では批判の最右翼にいたのに、社会批判が激化するにつれ、いつの間にやら氏自身のあり様が中立派になったとも。死を情緒的かつ追憶の世界に入ることとする日本民族の特殊性に触れた箇所が興味深い。2017/01/01

kawa

37
1968年頃、世界でにわかに起こった心臓移植手術競争に材をとる小説「神々の沈黙」の取材の様子を、同著者がノンフィクションとして綴る。小説として読んで充分面白い内容で、和田移植事件として取り上げられ数々の疑惑が解明されることなく幕が閉じられた日本最初の心臓移植だからこそノンフィクションで描く迫力と価値があるのかも知れない。医師・学者の探求心、虚栄心と職業倫理の関係を考えさせられるとともに、一見順調だったように見える和田氏のその後の人生にも想像が膨らむ。2023/09/29

mondo

37
「消えた鼓動」は「神々の沈黙」の創作ノートの一つと言われているが、吉村昭が「神々の沈黙」を書き終えた後、どうしても真実を調べ、執念で書き上げたもので、執拗に正面から憤りを筆にしている。吉村昭作品の中では類を見ない作品と思う。読まれていない方は、「神々の沈黙」を読み、その後で「消えた鼓動」を読まれることをオススメする。文字数の関係で、内容まで書くことはできないが、先進国日本で心臓移植が他国に比べて遅れ、多くの尊い命を守ることができていない現状が、過去のこの事件によることを色々な意味で知る必要があると思った。2023/04/20

hatayan

36
単行本は1971年刊。当時の国民的作家・吉村昭が1968年に日本で初めて行われた心臓移植の関係者や海外の先進事例を取材。 密室のなかで行われたいわゆる「和田移植」は、倫理的な視点や透明性を欠いた人体実験に近い暴挙とされ、事件として起訴は免れたものの医療への拭いがたい不信を残しました。 心臓移植は、一人の人間の死を前提に患者を救おうとする試み。死んだ人間の心臓が別人の中で生き続けることへの違和感を率直に表明しながら、科学や医学が進歩する過程で人間は狂気に身を委ねてきたことを歴史を引いて厳しく戒めます。2019/07/08

まめお~

4
「神々の沈黙」の創作ノートであるこの本が読みたかった。ここには小説という【枠】の中では書ききれなかった著者の思いがある。2013年2月に日本国内で心臓移植手術を受けた日本人数が海外で手術を受けた日本人数を超えた。文庫版あとがきに「心臓移植で多くの命を救ってもらいたい」とあったが著者はあの世で本当にそう思っているだろうか。「人間の頭脳の生んだ科学的知識は、(中略)かぎられた範囲内で人間に係り合うものでしかなく、人間の最も厳粛な死の訪れを乱すことは許されない。」という思いは変わらないのではないか。2017/10/31

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