内容説明
五年間、一度も友人と食事をしたことがない。他人と話をするのは、月二度程度という静寂だけの日々。――理津子は男に飢えていた。カトリック神父のもとで育った彼女は、恐ろしいほど規律正しい厳格な生活が、骨の髄まで染みついている。他人に、自分に嘘がつけない。誤ちには厳しい戒めもいとわない。そんな理津子の前に、本能の赴くままに生きる男・大西が現れて……。子供から大人へ――。精神と肉体の変化、個人と社会との関わりを残酷なまでに孤独な女性を通して描ききる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆきらぱ
27
「ひとりでいるのが好き、だと言えるのは、果てしなく長い時間をひとりでいたことのない人間だからである。彼、あるいは彼女にとっては、ごく短い時間にひとりでいることが新鮮なのである。」ここに圧倒的な孤独を感じた。果てしない孤独に恐ろしさも感じた。姫野カオルコの小説はそんな孤独を少し解きほぐしてくれる2022/05/20
金吾
26
主人公のアンバランスさが話の続きを知りたくなる推進力になっているように感じました。何故そのような考え方になるのかを理解不十分ながら咀嚼しながら読みました。幼少期から今までを上手くまとめているように思います。2023/12/04
ふみ
24
理津子さんの思う卑しさ汚さ、けっこう理解出来てしまうんだけど、そうすると自分は不潔極まりない女になっちゃう(笑)困ったなー。2016/09/16
あまみ
17
筋の構成が上手いのだろう。読み始めたら置くのに苦労する。▽睡眠薬を7錠も飲んで、ドライバーを持って、溢れる風呂に入ってーー。ウワーそうなるのか! こんな物語か?と恐れたら……そんなことって(意味不明(笑)。 理律子のような女性を作り上げる姫野さんはすごいと思った。 2023/05/13
宇宙のファンタじじい
14
「世間の当たり前」が当たり前にできない苦しさ。それは何も、本書のテーマである処女に限らないだろう。進学、就職、結婚、出産etc。自分を受け入れてもらえない(=自分でも受け入れられない)ということが、ただひたすら、寂しくて、哀しい。ただ、そんな気持ちになるときもある。だから、とても寂しくて、哀しくなった。2014/10/13