内容説明
「夢」と「現実」の隙間から這い出してくる虫。あらゆる生物が生きたまま腐敗する世界。たった一日で悟りを得られる宗教の流行。植物と交わる女。子供を教育することが許されない未来、突如おのれの寿命を悟ってしまう人々の出現、永遠に終わらない悪夢の中に閉じこめられた男、などなど……。轟音とともに、この世界が崩壊する。13の研ぎ澄まされた悪夢の剣。ホラーファン待望の精選短編集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BUBI
5
どの短編も概ねアイデアはいいけど消化不良です。「裂け目」人類滅亡の物語。「腐敗都市」栗本薫さんの「黴」を思い出す。オチが安っぽい^^;「柱時計のある家」ゆかりは治ったのかしら?「すばらしき正義の国」これは面白かった。かなりショッキング。「植物画」エロティックな妄想をかきたてる。オチがイマイチ。「悟りの時代」これはこれでいい時代。「つるつる」新発想。初めて読んだ。「みにくい美女」不愉快。「最後の教育者」面白くない。「個性化教育モデル校」オチが分かっちゃった。「生と死の間で」私も死期を知りたい。以下略。2016/02/13
たいへー
3
世にも奇妙な物語的なお話が詰まった短編集。ゾクゾクさせられ、この先どうなるんだ?と続きが気になり、最後にひねりの効いたオチがあって、読み終えたあと考えさせられる、そんな奇妙な物語が13篇。角川ホラー文庫の一冊だが超自然的な要素はほぼ皆無。それでも「裂け目」で描かれる、平和な日常が徐々に異世界に侵食されてゆく過程は、この世界の裏側にもしかしたら・・・という恐怖感を味わわされた。あまりにも非現実的な話だと怖さを実感できないし、かといって現実的すぎれば単なるサスペンスになってしまう。そのさじ加減がうまい。2020/06/09
まめなやつ【多摩市多摩センター整体マッサージ】
3
怖すぎないんだけど,モヤモヤした"いやぁな"後味が残る作品群。変にグロテスクにしないで上品にまとめてるところに好感が持てる。面白かった。2015/07/07
ジャッカル佐崎
2
単行本未収録作品を集めたSFホラー短編集。かなりの割合で世界が破滅するのでたいへん景気がいい。すべての人々が自分の死期をなんとなく悟ってしまう社会の変貌を描く「生と死と狭間で」、あらゆる生き物が生きながら腐り果てていく「腐敗都市」などは、やや古典的ながらもこのまま長編になり得るポテンシャルを秘めたアイデア。理不尽な侵略ホラー「裂け目」、デタラメ極まりないバカSF「つるつる」、とにかく読者をイヤな気分にさせてやろうという気概が頼もしい「醒めない悪夢」「みにくい美女」も忘れがたく、傑作揃いと言っていい。2021/06/20
小物M2
2
これは地味ながらも予想以上に素晴らしい短篇集だった。純粋なホラーというよりもどちらかと言えば奇妙な味に近いのかもしれない。SF要素も意外に強いのでその辺も好みだった。読んでいるとどこか牧野修や式貴士を彷彿とさせるような作風。個人的に本作はもっと評価されてもいいと思う。お気に入りは、夢の世界から怪物が徐々に現実に侵食する「裂け目」。病によって人々が生きながら腐敗する世界を淡々と描いている「腐敗都市」。居心地の悪さが何とも言えない「悟りの時代」。意外なホワイダニットが楽しめる「忘れ物」。2015/07/08