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内容説明
ヴィクトリア文化は性を抑圧する文化であり、性に対するとりすました淑女ぶり、お上品主義である――このような考え方は、今世紀のみならず、当時からすでにあった。「中流階級の女たちは不感症に育てられる」「娼婦に落ちたら死ぬまで娼婦」「避妊を知らない」「未婚の母は召使に多い」など、本書は現在まで多くの人が受け入れている「神話」を26とりあげ、その虚構性を当時の日記や書簡、新聞の投書や漫画などの資料を通して検証する。
目次
序章 女王の素顔が見え隠れする幕あけ
第1章 結婚
第2章 男たちの性
第3章 女たちの性
第4章 娼婦たち
第5章 少年少女と性
終章 ヴィクトリア文化
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
viola
6
ヴィクトリア朝の結婚・・よりは性・セクシュアリティの文化史に着目したもの。年若い娼婦などについても触れられています。想像以上にきわどい内容が多めでした。 2011/04/28
hikarunoir
5
俺に潜むロマンティック・チルドレンの起源探求目的だったが、切り裂きジャックを頂点に性虐待や女性嫌悪と綺麗事との落差も強烈。2017/03/22
印度 洋一郎
4
性に関しては謹厳だったヴィクトリア朝における、「性」と「結婚」について、その神話を26のテーマで検証。建前では恋愛結婚が認められていたが、強固な階級社会によって、階級差婚は難しかったという、いかにもな現実や「離婚は認められているが、議会への申請(!)が必要で、実際にはとても困難」等建前と本音のギャップが随所に見える。しかし、建前が形骸化していたというわけでもなく、重んじられながらも個々人の都合で融通の利く運用をされていた、という印象。「女性に性欲はない」「子供がオナニーをすると気が狂う」等の通説も面白い。2023/10/23
富士さん
4
再読。ヴィクトリア朝期イギリスの性倫理の建前を一つ一つ検証しようという本。この時代の偽善性への批判はよく耳にしますが、真正面からここまでまとめて総括したものは珍しいのではないでしょうか。結論としてはみんなそれなりによろしくやっており、建前に盲従することはない。ということがやはり証明されます。しかし、ここまで徹底的に検証されると、その実質性はともかく、倫理というものは真面目に捉えれば捉えるほどバカを見て、人生をかき乱した挙句、犠牲者の努力よって補強されていくものだという現実をいやがおうにも突きつけられます。2016/04/25
madhatter
4
再読。ヴィクトリア朝の「神話」の実態を暴くという目的が本書にはある訳だが、この「神話」の裏には、本来的な在り様を抑制された女性の存在が大きい。故に渡来氏の論は、それを突き崩すことを目的とせねばならぬ筈だが、この目的=結論を先に設定したため、それに論証を無理に合わせた印象が拭えない。故に氏の論は、特殊例をあげつらった、重箱の隅をつつくようなものが多く、各論の結論も尻すぼみに感じられた。読者の持つ「抑圧された女性」というイメージを変えるには至れない著作。2011/11/13