内容説明
奇想天外・荒唐無稽と絶賛をあびる山田風太郎作品。その原点が現代ミステリだ。「愛する義妹の孕(はら)む子の父親探しに狂奔するアプレ遊廓の経営者」「客の男たちを恋の騎士として競わせる経歴不詳の酒場のマダム」ら、戦後のデカダンスを色濃く映す主人公。戦慄と猟奇、妖美と夢幻の渦巻くなかに仕掛けられる想像を絶する動機と犯罪、ドンデン返しの結末。人情の機微を踏まえたトリックが翻弄する傑作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そうたそ
27
★★★☆☆ ちょっと期待外れだったのは、タイトルに「ミステリ」とある程、ストレートなミステリではなかったということ。どちらかといえば、「ミステリアス」というニュアンスの方が強いかもしれない。勿論、山田風太郎は正統派本格ミステリも数多く残しているので、この作品集が彼のミステリのベストセレクションではないのは言うまでもない。全体的にミステリの色彩を帯びた幻想小説、ホラー小説、ユーモア小説の集まりというのが正しい認識かもしれない。結果的にはそれはそれで面白かった。しかし本当に山風ミステリは独創的で面白い。2015/08/18
かわうそ
22
ロジックで解決を導くというよりは、意外な結末で驚かせるタイプのサスペンス風ミステリが中心。バカっぽいけど切れ味鋭い作品が多くて大満足。お気に入りは「不死鳥」「新かぐや姫」「笛を吹く犯罪」あたり。2016/08/08
くらびす
16
小説なるものを様式の柵で括ろうとすれば、必然山田風太郎はみずからの作家名で括られることになる。これはファクトではなくフィクションなのだから多様な視線を許容するのはあたりまえなのだが、それでもこの豊饒さはちょっと類がなく、呪いのような磁力は私を釘付けにしてくれる。2014/03/19
有理数
13
山田風太郎のまさに驚天動地の着想がミステリとして完成された何とも贅沢な短編集でした。騙すテクニックやトリックもそうですが、妖艶な雰囲気が素晴らしい。「新かぐや姫」「司祭館の殺人」が個人的にベスト。前者は、義妹の孕む子の父親を探す遊郭の超絶フーダニット。後者は聾者・唖者・盲者の交流から発展していく殺人、鮮やかな解決。どうしてこんなことを考え付くんでしょうか……毎度言っている気がしますが、山田風太郎はほんとに天才ですね。「新かぐや姫」等、もっと読まれるべき作品なので何か新しい形で出ないかなと思いました。2014/07/31
ネムル
8
敗戦後の人間復興かニヒリズムか。新しい生のぎりぎりの縁で、やはりぎりぎりのどんでん返しを仕掛ける「新かぐや姫」に泣く。あと「笛を吹く犯罪」「司祭館の殺人」も良い。いまでは問題だらけな作品ばかりだけど。2022/01/10