内容説明
約二千年前、古代ローマの博物学者プリニウスが、世界最大級の自然誌事典『博物誌』全三十七巻を著した。古今東西の文献や当時の思想を総動員して編まれたこの『博物誌』は、天文地理から動植物、鉱物、薬物、人間文化に及ぶ一大奇書であった。この大著に魅せられて渉猟する澁澤龍彦は、プリニウス独特の奇想天外な想像力を楽しみつつ、怪物や迷宮や畸形など幻想と想像の異世界へと読者を誘う。
目次
迷宮と日時計
エティオピアの怪獣
セックスと横隔膜
海ウサギと海の動物たち
薬草と毒草
カメレオンとサラマンドラ
琥珀
畸形人間
鏡
世界の不思議
磁石
鳥と風卵
アネモネとサフラン
頭足類
スカラベと蝉
宝石
誕生と死
地球と星
天変地異
真珠と珊瑚
香料
象
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
21
古本屋で河出文庫の『澁澤龍彦コレクション』を何冊か入手しました。最初に手にしたのは、ヤマザキマリ、とり・みきにより漫画化もされて去年ようやく完結した『プリニウス』の影響も有り、この本に。兎に角あの時代に『大博物誌』を纏めたのは天晴れですが、その内容は今からすると正確さとは縁も無いもので、アリストテレスの丸写しの部分も多々あり、妄想の産物やコジツケに溢れています、殆ど法螺話かいな?と思う面も含めて、今で言うアウトサイダーアートを楽しむ感じで、追々突っ込みを入れ、楽しみながら愛する澁澤さん、とても素敵です。2024/01/14
双海(ふたみ)
15
『博物誌』第十巻第六十三章の引用が面白かった。たしかに人間は他の動物と異なり、昼夜を問わず性交可能であり、且つ満足を知らない。「なんと人類は獣よりも罪深いことか」というプリニウスの嘆きもわからないこともない。2014/10/13
凛
15
どうやら私には妄想を妄想として楽しむ能力が欠けているようだ。妄想がその人にとっては現実で、その現実を描いてる物が好きなのかも...(断定には至らない)。世界の切り取り方の違いを見たい、ってことかな?もしくは現在知られているより現実的な博物学の方が本当に存在している為に、一層興奮させられるからかもしれない。途中で読むのを止めてしまった。余った時間つぶしとかには合ってる気がする。2013/11/20
ヴェネツィア
15
プリニウス『博物誌』の抄録が22回にわたって「ユリイカ」に連載されたもの。1世紀のローマ人プリニウスによる世界理解ということになるだろう。学問的な基本はギリシャのアリストテレスに範があったようだが、こうしたところにも、ギリシャとローマの文化的な関係が投影されている。澁澤によるきわめて高等遊民的な紹介だ。2012/03/24
ぐうぐう
11
これまで自著で、数々の引用をされたプリニウスの『博物誌』。この『私のプリニウス』は、その『博物誌』をたっぷりと紹介する一冊だ。しかし澁澤は、二千年前に書かれた『博物誌』の虚と実を科学的に検証するというような味気ないことはしない。現代から見れば、眉唾満載の記載にも、丁寧に付き合い、「ありえない」と否定しつつも、その嘘を愛でるのだ。そんな茶目っ気たっぷりの案内人による『博物誌』が、おもしろくないわけがないのである。2009/07/01