内容説明
第2次世界大戦中のドイツ占領下のリヨンで、友人の神学生をナチの拷問にゆだねるサディスティックな青年に託して、西洋思想の原罪的宿命、善と悪の対立を追求した「白い人」(芥川賞)汎神論的風土に生きる日本人にとっての、キリスト教の神の意味を問う「黄色い人」の他、「アデンまで」「学生」を収めた遠藤文学の全てのモチーフを包含する初期作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ω
61
芥川賞受賞作の「白い人」はいわずもがな、小説デビュー作である「アデンまで」がこれまた劇薬ω 白人女性との交ぐわいを回想するところで鏡に映った自分を「真っ白な葩(はな)にしがみついた黄土色の地虫」と連想し「その色自体も胆汁や人間の分泌物」と結びつける…… 純愛系じゃない周作はキツイ、エグイ。でもスバラシー!!2021/09/28
メタボン
38
☆☆☆★ 後の「沈黙」に通じる信仰への懐疑をテーマとした初期作品集。「白い人」は頭でっかちなイメージであまり好きではない。むしろ破戒した神父を青年の証言と本人の日記で綴る「黄色い人」が良かった。「アデンまで」「学生」は小川国夫のギリシアものにも通じる硬質な作品。2023/08/14
たぬ
9
☆4.5 芥川賞受賞の「白い人」など初期4作品。級友を何の咎めもなく拷問する。黄色人としての劣等感。4作品ともわずかの明るさも希望もなく、じわりとした暗さが忍び寄る感じ。「白い人」単独なら満場一致で5点満点だけどほかの作品もみんな良かった。(個人の見解では肌のきれいさでは日本人女性は白人女性に圧勝してると思います)2019/09/24
AR読書記録
8
そういえば遠藤周作読んだことあるっけ...という状態なのだが、「遠藤文学の全てのモチーフを包含する初期作品集」をまず読んだのは、いいことだったんじゃないかと思う。カトリシズムの、あるいは人間の、強烈な負の面を直視し、自身もそれに搦め捕られた状態から、いかにこの世界への信頼を取り戻していくか。このあとの作品を読んでいくことで、いわば暗黒面堕ちからの復活の過程を、追体験できるんじゃないかと思うから。全集読みたいリストにいれたほうがよさそうだなあ、でもすんごい量ありそうだなあ...2018/05/07
ymazda1
4
ものごころがついて、気づいたら背負ってた、なんか黒いもの・・・それがたぶんこの人にとっては、たまたま「宗教」だったんかなってよく思うけど、作品をかさねていくなかで別の何色かに変化していく前の、その「黒いもの」がこの2つの小説には原点みたく詰まってるような、そんな気がする。