内容説明
肝硬変末期、全身が衰弱しつつある窓際会社員の体内で情報細胞の最後の旅が始まった。行く先々で様々な情報を蓄えつつ、めざすは延髄末端の十二番街。臓器という都市の混乱を緊迫した筆致で描く表題作ほか、現実と虚構の融合を語る「瀕死の舞台」。桜の木が切々と陳述する「樹木法廷に立つ」等、SF回帰と熱狂的に迎えられ、“死”をめぐる文学的野心作とも激賞された傑作14編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アマニョッキ
55
このなかの「公衆排尿協会」という作品がすこぶる好きでして、定期的に読みたくなります。わたくしも全く同じような感覚を持っておりまして、これを読むと吐きたいほどの苦しみに襲われつつ、最後には出産を凌ぐほどの快感を味わえるというなんとも不思議な脳内麻薬ズバズバ作品なのであります。Don't think.Feel!2021/01/27
さっとる◎
45
これもまた傑作揃いな14の短編集。何が書いてあっても「筒井作」なだけですごいなと思ってしまうのだが、それはやっぱりすごいものを書いているからなんであろうな(当たり前か笑)。しかも珍しく最後の短編「瀕死の舞台」で号泣っていう(^^;泣けて笑えて悲しみ諦め恐怖する、死。無意識に潜む人間の驕りに気付きスッと背筋が冷える。理解不能なものや理不尽に直面した時のシュールな行動、それだけでは終わらず陥る狂気。不思議な余韻の「タマゴアゲハのいる里」が何気に好き。井戸時計店で、また「脱走と追跡のサンバ」が読みたくなった。2017/05/10
メタボン
35
☆☆☆☆ 文学的な作品も多いが、そこはやっぱり筒井康隆。ナンセンス、ドタバタな世界観。夏休みの宿題の作文で北極に行くという妄想を綴る「北極王」、不思議な生物がいる「タマゴアゲハのいる里」、死ぬまでの時間を示す「近づいてくる時計」、9回死を迎える「九死虫」、驚愕のスカトロ風景「公衆排尿協会」、なかなか性交できずムラムラが昂まる「あのふたり様子が変」、肝硬変の身体の中を年になぞらえる「最後の伝令」、飛び降り自殺した後も徘徊する「二度死んだ少年の記録」。寝たきり老人の役として俳優人生を全うする「瀕死の舞台」。2022/12/22
おすし
20
『禽獣』読みたさに手に取ったものの他の短編集で読んでた…新たに楽しめちゃう私の記憶力に感謝笑 幻想まじりのエッセイ調。飼っていた動物たちへのほんわかとした愛とか人格ならぬ獣格を軽んじない感じがいい。他13編。特に好きなのは、『公衆排尿協会』夢でおしっこしたいときのやつだ!!『あのふたり様子が変』情愛が遂げられそうで邪魔が入る、大所帯のお屋敷大変ね~ってコミカルさからのオチの落差…『最後の伝令』筒井版働く細胞。『十五歳までの名詞による自叙伝』ワーすっご!私なら2行くらいで終了しそうだ…2025/07/16
ねりわさび
15
ドタバタサスペンスと半自伝的エッセイと実験小説が混濁し、勢いが大きく上下する筒井康隆氏らしい短編集。生理的にヒリヒリくる題材でも、お笑いテイストを隠し味として作品内に組み込んでおく技は流石でした。2018/08/22