内容説明
アメリカの巨大鉱業会社から、ペルーの山岳ゲリラの首領抹殺の仕事を依頼された破壊工作員・志度正平(しどしょうへい)は、首都リマに到着、2人のインディオと共にゲリラの進発地チャカラコ渓谷に向かう。4千メートルを超すアンデスの山々を越え、ゲリラの基地に潜入した志度を待つ過酷な運命とは!? 南米3部作第2弾! (講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
70
緊張の一か月のために弛緩の十か月がある。この文章を高校生の時に読んで以来、人生の91%は緩んでいてもよいのではないか、と思ってしまって現在の僕があります。それはさておき、久方ぶりに再読すると、前半と後半ですごく印象の違う本でした。第一章の「刺青の蝶が飛び立つとき」に象徴されるように、昭和でベッタベタなかっこよさと、一週間でたるんだ身体を作り直すというようなギミックに前半は引き込まれますが、後半ペルーの高地に行ってからは、マジックリアリズムを目指したかのような混沌の世界に。後半が成功しているとは(続く)2021/03/08
drago @弘前城ソメイヨシノ満開中。
21
面白かった。『山猫の夏』と比べると見劣りしてしまうが、それでも迫力満点。ただ、ちょっと話が長すぎるのに加え、図書館から借りた本が古すぎて赤焼けが激しく活字も小さいので、非常に読みにくかった。 ストーリーはテンポが良く、次から次へと登場人物が死んでいくので最後はどうなるのかと思ったが、エンディングは想定の範囲内。主人公・志度正平の意志の強さ、プロの殺し屋としての矜持が格好いい。それにも増して、邪魔者ポル・ソンファンの執念深さが驚異的。 ☆☆☆☆★2014/10/26
アオヤマ君
18
約30年ぶりか再読。船戸与一はやはり強烈。持って回った言い回し、決めつけに好き嫌いはあるにせよ。喧騒、牛の臓物が唐辛子ともに焼ける臭い、マテ茶を沸かす臭い、刺青、星月夜、矜持、毒虫、貫頭衣、南風の啜り泣き、標的、終焉、雹、山刀。単語に何か別の意味があるかのように綴られる文章。暗喩。南米ペルーの山岳地帯を主とした舞台に!!!な破壊者たち。ケエナの旋律。奏。神話果つるとき。2021/10/18
hit4papa
16
船戸与一 南米三部作の第2弾です。ペルーのゲリラ組織を壊滅すべく派遣された、日本人破壊工作員の活躍を描く冒険小説です。元文化人類学者にして殺戮衝動に目覚めた主人公という設定が面白い。血煙漂う西部劇を彷彿とさせる、スケールの大きな作品です。全編の血なまぐささや決着のつけ方からすると、男性読者向けの小説なんでしょうね。
Satoshi
11
舟戸与一南米3部作の2作目。前作に比べると派手さが無いが、砂のクロニクルに通ずる虐げられた民族の悲哀と歴史の傍観者である日本人が描かれている。主人公を含む3人の腕利きの破壊工作員が登場して、三つ巴のアクションが繰り広げられるのかと思いきや、決着は呆気ない。元クメールルージュの幽霊のような殺し屋なんていいキャラクターなのにもったいない。2019/04/05