内容説明
「復☆電書」企画にて、電子書籍で復刊! 現実と幻想の中に飛翔する「言葉」の真髄。夢の中で買い物に行った商店街はどんどん増殖、いろんな顔を見せて無名作家の「私」を楽しませる表題作。他に、飼い猫の失踪事件を描いた短篇など四篇を収録。収録作品「増殖商店街」「こんな仕事はこれで終りにする」「生きているのかでででのでんでん虫よ」「虎の襖を、ってはならなに」「柘榴の底」。(1995年10月刊)電子版のみ『あとがき小説「ようこそ」』も特別収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
33
猫の話があり、夢の話がある。逃亡した猫を必死に探して、やっと公園でみつけた。が、大きさが1.5倍もあり、元の猫とは違うようである。エッセイなのか夢の話なのか区別がつかないのは、犬は象徴界のペットだが、猫は想像界のペットであり、この両猫の差異が作者の独特の逡巡や後悔を表現しているようにみえるからだ。村上春樹にも猫のエッセイがあり、そこでの猫とは過去に置き忘れたうしろめたさのようなものを表現していた。著者の一筋縄ではいかない「寄り道」癖と猫の話は相性が良い。2025/12/25
踊る猫
10
夢と日常を往還するという所作を笙野氏は自家薬籠中の物としてしまったかのようだ。実際にこの作品集では夢と日常の混在する状況から生まれるカオスがこの上なく冷徹な筆致に依って描かれている。筒井康隆氏をも髣髴とさせるその自在な筆致に酔い痴れることが出来て、とても幸せな読書体験を過ごせたと思う。ただ、やや自己模倣に陥って来ているのではないかといらぬ心配をしてしまうのもまた確かなのだった。あと、自分が猫を飼ったことがないのもこの作品集に今ひとつのめり込めない原因なのかもしれない、と。さて、次は『母の発達』を読もうかな2016/04/25
あ げ こ
2
日々の生活に於いて生じた細やかな欲望。たまりに溜まった疲れと精神的ダメージ。向けられた悪意の正体。その土地に感じる空気の種類。夢として描かれる歪んだイメージの中に、たっぷりと含まれた現実に対する皮肉。その容赦の無さがたまらなく心地よい。生き抜く為に必要とした現実逃避。まっとうな振りをした人間の陰湿な本性を暴く、危うい夢の正しさと、負の要素だけを異常に膨らませた記憶に感じる強烈な闇の印象。だが逃避先である夢は、それを上回る程の破壊力を誇る。ハチャメチャな夢の中で不意に出くわす、律儀な現実感が妙に可笑しい。2013/12/11
G
1
再読。大学の図書館で読んで以来。猫を探すお話の、子供の描写が心に残っていたけど、読み返してみると以前ほど腹立たしく感じない。そのせいで主人公がどれだけ猫を求めていたのかが前よりもよく分かるような気がする。『虎の襖』がお気に入り2014/11/19
くままつ
1
ころころと態度を変える世間に、猫を連れてワープロを叩き立ち向かう。この人が戦い続けられるのは、後ろに守るべき家族がいるからなのかなーと思う。愛の為せる業、なのか。猫を愛する「私」は何時の間にか母だなあ。2012/10/14
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