内容説明
アジアにおいては、文明の窓口はつねに海に面していた。インドのボンベイ、ゴア、インドネシアのジャカルタ、マレーシアのペナン、ベトナムのホーチミン、そして台湾・台南……いまもってこうした港町には、「海のシルクロード」を感じさせる歴史の断片が散らばり、民族の濃縮されたアイデンティティがある。日本海の港町で育った著者が、海洋民族としての一体感をこれら「海の道」をたどりながら見つけだし、そこで暮らす同時代人の表情、夢、生活の息吹を描きだした傑作紀行。
目次
エリート兄弟のいる風景―ボンベイ
カム・トゥ・ゴア―ゴア
南の町に沈むダビデの星―コーチン
アンナ・サライの二人の娘―マドラス
丁子の島と西からの風―アンボン
幽閉作家会見記―ジャカルタ
マラッカ海峡の人びと―ペナン、マラッカ
観光年に賭ケるボートピープルの国―ホーチミン
虱目魚追跡行―台北、台南
波濤二千六百キロ、日本兵の漂流―ポリリオ島
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あかつや
4
インド、インドネシア、マレーシア、ベトナム、台湾、フィリピン、アジアの海道を巡る旅。さすがに古い本なので、発展著しいこれらの地域の現在とはかけ離れた部分も多いだろうけど、なんとなく雰囲気は伝わった。東南アジアを拠点に活動しているMMA団体の試合を近年よく見るので、これらの地域はけっこう親しみがあって、いつか行ってみたいなあ。その団体の初期の頃はあまりに低レベルな試合が多くて、こりゃ時間がかかりそうだと思ってたんだけど、最近は日本人もなかなか勝てなくなってきている。アジアの発展はそういう面でも実感するなあ。2020/11/10
Hiroki Nishizumi
2
こちらのアジア海道紀行は南シナ海からアラビア海までその舞台を広く取っている。ただ内容は古さを感じ、ドキュメンタリー的に得るものが感じられなかったことは残念である。2017/12/11
MioCastello
0
レオナルド・ディカプリオ主演の映画「ザ・ビーチ」の公開が2000年。当時タイのパンガン島とアムステルダムを相次ぎ旅した私は仕上げにとインドゴア行きの計画を練ったものだ。しかし夢は叶わず月日は流れいつしかゴアはヒッピー天国ではなくなってしまったらしい。せめてあの当時の雰囲気だけでも味わえたらと本書を手に取る。1990年初版という時代背景やゴアやマラッカを巡るルートから勝手に「深夜特急」的なものを期待したが予想に反して社会派紀行だった。それはそれで良かったし当時の人々の息遣いもしっかりと感じることができた。2020/04/26