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内容説明
一匹狼弁慶、官僚の典型富樫、落魄の貴公子義経。ホンネとタテマエの葛藤に生きる三人の男達。全十九段の分析を通して、日本人の原像を描いた名作の魅力を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こにいせ
2
歌舞伎・『勧進帳』を歴史的、社会史的に読み解く。演題、演者を精緻に分析してゆくと、弁慶・富樫・義経の登場人物に日本人特有の社会観が透けて見えるという指摘は示唆に富む。これは単にポストモダン的なアナロジーでそういうことを言いたいのではなく、勧進帳の成立を追っていくと、その都度「古典回帰」が見られ、それが何度も日本人の共感を得てきたからこそ、この演目に日本文化の「原型」を視ることが出来るのだ、という指摘であることに注意。2010/05/05
Tom Ham
1
読了。図書館で借りました。FBの読書の師匠(と勝手に思っています)吉本さんからのお薦め。はっきり言っておもしろい!吉本さんから「下手なそんじょそこらの小説よりも面白い!」とコメントをいただいてました…その通りでした(笑)弁慶と富樫の息詰まる攻防、義経と弁慶の関係…どこを切り取ってもドラマティックで日本人のツボを押さえきっている作品です。またいい本に出会いました!!2013/05/12
左近
0
ストーリーの元になった『義経記』などのエピソードを紹介し、次いで幕末に市川団十郎を中心としたグループが能『安宅』を下敷きに『勧進帳』という歌舞伎作品を作り上げ、やがて成田屋のお家芸から、色々な役者で頻繁に上演される人気演目へと成長する過程を追い、黒澤明による映画化にも触れ、日本人論へとつなげていく。しかしながら、何と言っても最大の読みどころは、テキストと史実に基づいた全段の詳しい注釈。まるで生の舞台が眼前に浮かび上がってくるような迫力の文章で、そこだけ独立した小説作品と言っても良いくらい。2014/04/30
wasuregai
0
「勧進帳」があまりに度々上演されるために、役者の側にも観客の側にもテキストの解釈、演出の正否についての関心がうすくなっているからである。(あとがきより) 「勧進帳」は曲を楽しむものだと思っていたが、新書とは思えないほどの詳細なテキスト解釈に、勧進帳の「ドラマ」としての面白さに改めて気づかされる。またその詳細なテキスト解釈があるからこそ、そこから展開される弁慶・富樫・義経の人物描写に日本人の典型を見ていく展開に説得力がある。渡辺さんの芝居に対する考察は今まで読んだものはどれも興味深い。2010/12/13