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内容説明
天然雪の研究から出発し,やがて世界に先駆けて人工雪の実験に成功して雪の結晶の生成条件を明らかにするまでを懇切に語る.その語り口には,科学の研究とはどんなものかを知って欲しいという「雪博士」中谷の熱い想いがみなぎっている.岩波新書創刊いらいのロングセラーを岩波文庫の一冊としておとどけする.(解説樋口敬二)
目次
目 次
序
第一 雪と人生
第二 「雪の結晶」雑話
第三 北海道における雪の研究の話
第四 雪を作る話
附 記
附記 第十一刷に際して
解説 (樋口敬二)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
66
科学が好きな人や雪について興味のある人におすすめしたい本になっている!読書友達におすすめされた本。実はおすすめされた時に読んでいたのが伊与原新著『月まで3キロ』であった。この本に中谷宇吉郎著『雪』の話が言及されていたので運命を感じて読み始めてみた!読んでみると雪について・人工雪の話がふんだんに記載されており実験や学術系の話がなかなか難しかった。しかし中谷さんの雪を溶かすくらいの熱量が文章から感じとることができた!また読み返したい本になってある!2023/12/10
南北
60
青空文庫で読んだのだが、検索できなかったので、こちらで登録する。日本海側の雪害については東京に住んでいる人間からすると、しかも戦前の状況となると想像の範囲を超えるものがあった。本書のキモとなるのは雪の結晶の観察と分類、さらには人工雪の研究のところだろう。日本の雪質が特殊なため、ヨーロッパの研究がそのまま当てはまらなかったところが逆によかったのかもしれない。科学者の名文といえるエッセイに触れることができる好著である。2024/05/26
かりさ
48
雪や結晶の研究、人工雪の実験に成功された「雪博士」中谷宇吉郎さんの科学の本。決して難しいものではなく、雪国の暮らし、積雪がいかに雪国の人々の暮らしを圧迫していたかを綴り、雪の結晶の成り立ち、そして結晶を人工的に作る実験を語るその語り口がとても読みやすく、書物として大変面白く読みました。自然の現象、雪への探求心、研究の道筋、人工で雪華を作るに至る思い、熱きものが伝わってきます。最後の言葉にかの有名な「雪は天からの手紙」が綴られ、それがロマンばかりではなく、自然科学の研究の魅力を書を通して伝えてくれるのです。2016/01/08
zirou1984
48
「雪の結晶は、天から送られた手紙である」という趣深い一文で有名な本作だが、同時にこれほどまでに科学的誠実さに溢れた本が他にあるだろうか。降り積もる雪のひと欠片を丁寧に観測し、吹きすさぶ冬景色の中、時には氷点下の実験室で根気強く分析を続けていく。やがてその研究は雪の結晶の多様性を明らかにし、世界初の人工雪の作成という偉業に結び付いた。エッセイ風に書かれた文章は理性的でありながらも簡潔な説明の中から気品の良さが滲み出ており、本人曰く「茶漬けのような味」の内容は滑らかに入ってくる。自然科学入門として最良の一冊。2013/12/11
koji
43
82年前の岩波新書第一号20冊の中の一冊。本文ラストに登場する「雪の結晶は、天から送られた手紙である」は余りに有名なフレーズですが、これはダンディでロマンチストの著者ならではの言葉です。唯本書の価値は、(科学的側面は勿論)研究者としての態度にあります。「研究という仕事は、一人の人間が一生を費やしても到底片付くものではない。一石ずつ築いた研究の上に立って、今後の有為な人々が、その上に真剣な努力を積み重ねることによって一歩一歩完成に近づくものである。」これこそ、著者が科学の研究を志す若者に贈る何よりの言葉です2020/05/24