内容説明
巨匠石川淳が、奔放な想像力と流麗な文体を駆使し、この上田秋成の『雨月物語』を現代に蘇らせる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
るすみら
24
ほどよく古典の香りが漂う文章が耳に美しい、石川版雨月物語。この角川版は、岡田嘉夫のイラストレーションが表紙に文中に散りばめられている。暗くて、妙におどろおどろしい岡田さんの絵柄が、雨月には合っている気がする。石川淳による「秋成私論」、「樊噲の部分について」(樊噲は春雨物語に収録)も、面白い。角川版は重版未定で品切れだが、今はちくま文庫から「新釈雨月物語 新釈春雨物語」が出ているらしい。上田秋成の雨月とは違う、石川雨月。今日のような満月の光が冴え渡る夜に、うっかり手にとってしまう一冊です。2009/07/08
えも
12
蔵書の再読■秋成の「雨月」と石川淳を同時に堪能できるオイシイ一冊。挿し絵もおどろおどろしくてよし■辻村寿三郎に人形芝居をやってほしいなあ2014/05/24
Kira
11
読むのは三回目。今まで何度読んでも「白峯」を理解できなかったが、今回初めて味わうことができた。「保元の乱」について少し知ったおかげで、崇徳院の恨みつらみがよくわかった。崇徳院の怨霊を鎮める西行の忠誠心がいい。 2021/11/27
あかつや
6
石川淳による現代語訳っていうか、純粋にはちょっと違うけどほぼそのようなもの。元々の上田秋成の『雨月物語』自体、古典文学としては比較的時代も若く、文章もそのままでわりと親しみやすいものではあるが、当然こちらの方がよりわかりやすい。現代語としては伝わりにくい所を削ったり、補ったりしているだけで内容は同じ。原文の雰囲気を損なうことなく自然な形でそれをやっちゃうのはさすがである。『雨月物語』に興味があって、特にこだわりがなければこちらでもいいでしょう。怪異小説の傑作をお気軽に、でもしっかりと味わうことができます。2018/11/06
Hatann
4
石川淳は『雨月物語』をして欲望と執念が渦巻く怪異の世界に拘泥せずに、日本短篇小説の様式をみた。後世が受けついで発展させていたならば、日本でも早くに散文を方法とした文章が現れ、明治以降に西洋の小説をみて驚くこともなかっただろうと指摘する。石川淳の『新釈雨月物語』はただの逐語訳ではなく、奔放な想像力と流暢な文体を駆使して用語や文体を変えるのみならず、ばさっと冒頭の美文を削除することも厭わなかった。原作の世界観に魅せられながら、近代小説の方法に即した翻案であり、上田秋成を引き継いだ、散文的な推敲だった。痺れる。2025/02/09