内容説明
日中戦争突入前夜、文芸および文化一般の保護育成と称して、官民合同での文芸院設立の構想が、再び持ち上がった。多くの文学者の反発で一時は後退したかに見えたが、国家総動員体制への流れの中で、次第に国家と巨大資本に包囲されていく。やがて文化勲章の制定、帝国芸術院の創設と文芸も戦時体制に組み込まれる運命に……。時代の大きなうねりの中で翻弄された昭和文人たちの誇りと、苦悩し苦闘する姿が描かれる。執筆の開始の直後に癌に冒され、病床で書き続けられ、死の三日前に完成された文壇史の傑作。
目次
状況の展望
何を今さら文芸院―与謝野晶子、正宗白鳥、徳田秋声らの反発
山本有三の「文学士道弁」と文芸懇話会
人および思想の系譜―小松原英太郎と松本学
安岡正篤の国維会と松本学の日本文化連盟
文化統制の諸相(芥川・志賀の見た山本悌二郎、その人 長谷川伸『雪の宿場街』の放送禁止 『源氏物語』の上演禁止物語)
文芸家慰霊祭一景―水蔭に舞ひ絡みてし老孤蝶
文壇五勇士の陸軍特別大演習観戦
孤立国日本の一九三五、六年危機説と文化擁護の問題
帝国美術院の改組で落花紛々
帝院陰々として帝展転々―悶々の文部大臣
文芸懇話会賞のいざこざ―佐藤春夫と広津和郎
ぎりぎりの誠実―中野重治と室生犀星
久米正雄の八つ当たりと近松秋江の老武者ぶり
文壇無鑑査組の意欲を覗かせた『文芸懇話会』誌
「財閥富を誇れども…」―フィランソロピーの先駆
文化勲章の制定と帝国芸術院の成立―志賀直哉・永井荷風・島崎藤村
詩歌懇話会と北原白秋―詩人賞わざわい「あり」や「なし」や
アート・サポートへの架橋
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