内容説明
土日返上で働きづくめの夏木は、思い切って二週間の休暇をひねりだし、チベットに出かけた。ラサの町で、ハゲワシに人間の死体を処理させる鳥葬を見て圧倒されたが、帰国後、夜毎の夢に現れる奇怪な光景の謎は? 表題作ほか、読むほどに怖くなる「頭の中の湿った土」に「閑古鳥(かっこう)」、爽やかな驚きがあなたを襲う「羊の宇宙」、超能力の持ち主同士の見えない闘いを描く「超高層ハンティング」など、夢枕ワールドを満喫できる、大満足の短篇集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
84
一話目『柔らかい家』が生理的に辛くて何度も挫折。表題作『鳥葬の山』は奇妙な味のストーリーが面白かったけど、具体的な鳥葬の手順はとばしながら読んだ。官能的な匂いがする『頭の中の湿った土』『あやかし』禅問答みたいな『羊の宇宙』が好きだった。〈死〉へと向かうさまざまなアプローチの8編。獏さんがとても楽しみながら書いているのが伝わってきた。2019/08/29
Yun
20
表題作を含む8編の短編集。表題作にもなっている「鳥葬の山」はそのタイトル通りあるきっかけで鳥葬を見る男の話し。鳥葬を見て以降夢に見る不思議な光景とその真相。どの話しも少し不気味で、奇妙な物語のオンパレード。幻想的な雰囲気を十分に楽しめた。2016/04/04
OHモリ
19
・テント山行の読書の友にと購入した1冊。読みだして「何だ!この異世界は?」ということで候補から脱落したBOOKOFF本。一人テントの中で読まなくて正解だった。 ・のっけの「柔らかい家」で始まって次の「頭の中の湿った土」へといきなりの異世界小説。タイトルの「鳥葬の山」なんてまだまともな方で「閑古鳥」はもっと怖い! ・夢枕獏さんは神奈川の同郷出身だし陰陽師シリーズなどもかつては読ませてもらったけど、このおどろおどろしさが彼の作品の魅力の一面ではあるのだろうけど自分の中では「神々の山嶺」が最高峰だと信じている。2022/09/07
じゅむろりん
19
名前だけは知っててようやく読んだ初夢枕作品。どう転んでも恐怖しかない嫌な夢のような「柔らかい家」。チベット旅行で目の当たりにした鳥葬の克明な描写と死の概念を綴った「鳥葬の山」。老いた物理学者と羊飼いの少年の交流「羊の宇宙」は、絵本で読んでいました。「頭の中の湿った土」がマイベスト。スルスルと読める文体が心地よく恐怖をストレートに感じられる短編集でした。2022/08/12
うーちゃん
13
短編集。私はこの本を「怖い本 おすすめ」とかでネット検索して知ったのだけど、確かに1話目から気味悪かった~。いわゆる"山の怪"ってやつなんだけど、ぐねぐねしててぶよぶよしてて、イワシやマッコウクジラが出てくる。山なんだけど。それがすごく不気味で気持ち悪い。同時に、発想がイカれてて楽しい。奇妙な味わいの話が多いが「羊の宇宙」はホラー要素ゼロ。空と、風と、草原。羊と、少年と、老人。ショートフィルムを見ているような美しい作品だった。山や森の美しさ得体の知れなさが細やかな筆致で描かれていて惹き込まれた。2021/09/19