内容説明
おれはいったい、何者になるんだろう。知への欲求と周囲の環境への嫌悪。独学で世界を切り開いていこうとする少年の前に立ちはだかる戦争。“昭和の青春”を生きた、自伝的三部作を収録。平林たい子賞受賞の名篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kubotan
1
ドイツ文学者中野孝次の自伝的小説(教養小説)。非常におもしろくて、1日で読んでしまった。 ただ、ところどころ記述が前後する箇所(初めて触れる事柄が既出のように扱われているところがあるかと思えば、もっと後でその事柄について初出のごとく説明されているなど)がある。特に第一部にあたる「鳥屋の日々」でそれが目につく。思うに筆者はもっと大部の作品としてこれを書き、それを発表するに際して相当縮約し、そういった編集が不備を生んだのではなかろうか。2015/04/18
霜月什緑
0
『認識はなるほどあとになって訂正される』(「鳥屋の日々」)ーー戦中の重いものと中野の重いものがじわじわだがどーんとくる。2013/03/22
ステビア
0
「昭和の青春」。良かった。その後も読みたい。2012/11/23
ももんが
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図書館本。北関東出身の大工を父に持つ著者の自伝的小説。自身の出自を嫌悪する主人公は、中二病的に両親への反感を募らせつつも脛を齧りながら旧制高校へ入学。同輩との日々を過ごすも戦況は厳しくなり学徒動員、召集令状により入隊前日までが綴られている。自身の嫌悪感・焦り僻みなどの内省、戦前戦中は次第に暗く淀んでいく世相が描かれます。後書きの著者ノート内の後日譚「ある老大工の話」に少し救われた気分になりました。文庫化にあたりつけた献辞、ここに至るまでどれほどの葛藤があったのでしょうか。2022/03/16