ちくま学芸文庫<br> 都市空間のなかの文学

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ちくま学芸文庫
都市空間のなかの文学

  • 著者名:前田愛【著】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 筑摩書房(2013/11発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480080141

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内容説明

二葉亭四迷「浮き雲」と言えば「近代的自我の発見を告知した作品」というのが常識だったときに著者が用いた方法は、二階の下宿(主人公内海文三は二階に下宿している)という住まいの空間を解読する事で作品を逆照射するというもの。実体としてとらえられてきた人間の自我を空間とことばの網の目によって決定されている関係性としてとらえ、ベンヤミン、バルトからフーコーまで現象学や記号論の成果を縦横に駆使して日本近代文学の流れを都市のコンテクストに即してたどる壮大な試み。

目次

空間のテクスト テクストの空間
開化のパノラマ 「東京新繁昌記」
清親の光と闇
廃園の精霊 「狐」
塔の思想 「佳人之奇遇」
獄舎のユートピア 「最暗黒の東京」
BERLIN 1888 「舞姫」
二階の下宿 「浮草」
子どもたちの時間 「たけくらべ」
町の声
仮象の街 「彼岸過迄」
山の手の奥 「門」
SHANGHAI 1925 「上海」
劇場としての浅草 「浅草紅団」
焦土の聖性
紙のうえの都市 「エーゲ海に捧ぐ」
空間の文学へ 「杳子」〔ほか〕

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

zirou1984

31
600ページを超える大著の為、駆け足気味に読了。江戸時代の作品から荷風や鴎外、一葉といった近代文学で描かれてきた風景を分析し、それを実際の都市空間と対比させながらどのように切りとられていたのかを分析し、そこに潜む主体と客体、文学理論の構造を浮かび上がらせる。これまでは思いもしなかったその分析方法も驚きなのだけど、何より斬新なのはその手法を70年代のエンタメ誌やタウン誌、ミニコミ誌に向けた「紙の上の都市」。ここでは言葉の力を再考しようとする試みが当時の時代性と見事に結び付いている。2017/02/16

しゅん

12
文学において街はどのように描かれ、どのような作用を持つのか。また、街の変遷によって文学はどんな変化を被ったのか。小説における空間描写を考える上では必読の書だろう。二葉亭四迷『浮雲』を二階建ての部屋構造から読み解いた批評は、内面に固執していた当時の日本文学観からの解放を試みた白眉な一品だ。古典から近代、現代文学までの流れの中で「橋」「塔」「下宿」「団地」など、それぞれの時代に重要な建築構造が言葉の上に現れるのが興味深い。個人的には都市以上に家に目を付けて読む文学の豊かさを教えてもらった気がする。2016/11/21

なめこ

5
胡散臭さにげんなりする箇所はありつつも某読書ガイドには「眉に唾をつけながら読むべし」って書いてあったっけな、とぼんやり思いだしながらなんとか読み終わった。とはいえ、小説に書かれた都市それ自体をテクストとして読み込むことによって小説の読みの場に広がりを持たせる運びは大変勉強になった。作者という実体概念の呪縛から文芸批評を解き放ちたいという思いが著者にはあったようだが、そういう著者自身いくらかまだ無邪気に作者の伝記的事実に無邪気に言及している箇所があったかとおもう。2016/01/25

きつね

5
前田愛「獄舎のユートピア」。監獄のパノプティコン化をスラム街の市区改正と重ね、都市=近代文学が失った故郷=牢獄=スラムのユートピア幻視を復元してみせる、というプロット。やや錯綜する部分はあるがその寄り道がいちいち魅惑的。ピラネージや食人族達、無縁所のイメージがけばけばしくて良い。字を書かないといわれていた若者世代に"シラけ綴方読本"を狙って成功した『ビックリハウス』ほかを論じる前田愛。書く主体性のモードをメディアが先取りすれば、読者はどんどん投稿する。切捨て御免の2ちゃんねる文体が廃れない理由か。2012/01/09

rbyawa

3
k023、この本を文学のテキスト論としてだけ読むのは寂しいことと解説で言われていたものの、いや、紹介されている文学が有名で比較的読みやすいものがメインであり、そもそも小説は時代の空気を感じるのは誰でもある程度は可能なので、論文みたいな難しい本に求めるのは分析しかないのでは…ないかな、と正直。都市が時代においてどのように描かれたかというより、作家たちがどんな距離感でもって都市と対峙していたのかみたいな本でもあるのかなぁ。ただ、個人的にはこの手のテーマに相応しいのは通俗小説とか新聞小説の類いだよなー、と思う。2020/03/15

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