内容説明
日本の近代文学史を彩るキラ星たち。そんな作家の代表作を短篇中心にコンパクトな一冊に収める文学全集。各巻に詳細な年譜を附す。若くして肺結核を患った著者が織り成す、病への不安と生への憧れからアンバランスで危うい魅力を放つ作品群。それらを通して、独自の美意識をもつ詩的散文世界を創りあげた繊細な感性に触れることが出来る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉田あや
77
(再読)桜の樹の下には屍体が埋まっている。あたりの空気を神秘的に包み込み、生の光満ち溢れる美しい桜。恐ろしい程美しい世界の下には…。桜の花と桜の根は生と死を繋ぐ大いなる境目。美しい桜もやがて散り、朽ち果て、新しい養分となる死を迎える。生を終えた死の発するかつての生の輝き。生の恐怖、死の甘やかさ。生の残酷、死の優しさ。生なしに死はなく、死のない生もなく。桜の美しさの中、反転する世界に惑いながら死は根より吸い上げられ、生へと還元し、夢のように鮮やかに甦る。2017/05/22
遠野
6
梶井は哀しくてさびしくてあかるい。透明な、眼の奥が白く染まるような光。なんでもないことを作品に昇華してしまうだけの感受性。五感に鋭く訴えかける筆致。改めて魅了されたのは、特に『檸檬』『桜の樹の下には』『冬の蠅』『冬の日』『ある心の風景』。『檸檬』については、これを二十四歳で完成させたことに対して無性に泣きたくなってしまう、やはり珠玉の一篇。群ようこさんの解説も愛に溢れて素晴らしかった。梶井について語り合える友人が、私も欲しい。2012/06/29
ykshzk(虎猫図案房)
2
「檸檬」は梅雨前のこの季節に読みたい。それ以外の短編でも、「小鳥達!」「革命家ではないか!」「爪のない猫!」・・などなど、文中にたびたび「!」が出て来るのは心地よいリズム。前半の短編に限って言えば、動物への観察眼と想像力(妄想?)が何とも可愛らしくて微笑ましい。猫の耳を竹の子の皮に例えるなど、天才的としか思えない。そしてその耳を「切符切り」でぱちんとやってみたいと妄想するのも、爪を全部切られて困っている猫の姿を想像するのも、なんとも自由な感性と表現力。群ようこさんの解説にあるように、五感が活性化される本。2015/06/02
芙月
1
物事に対する視点が好きすぎる。梶井のような多角的視点を持ちたい。そしたらもっと面白い話がかける気がする。2019/01/29
aki246
1
桜の樹のしたには屍体が埋まっている!2008/12/02
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