内容説明
昭和庶民伝第二部。笑いと涙の、傑作戯曲。敗戦後、復員してきたプロ野球選手を巡って神田の愛敬稲荷神社で起こる珍騒動。戦争と神道という重いテ-マを野球で明るく解き明かす名作。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
330
時は未だ戦後の混乱が続く1947年。所は神田猿楽町愛敬稲荷神社(この名の神社は神田には存在しない。市ヶ谷にあるようだが、架空の神社だろう)。お芝居は、闇米の調達をはじめとした庶民の逞しさを持ち前のペーソスを効かせて描き出したものだが、そこに往年の野球選手の思い出(その多くは戦死)を絡めたのまでは一応成功していると言えるが、そこにさらに神社本庁の問題とC級戦犯をも投入したことは、主題に幾分混乱をきたしたのではないだろうか。エンディングは、たしかにyやりきれないような寂寥に包まれ、余韻は深いのだが。2018/12/20
にいたけ
38
神道は日本土着の宗教で戦時中に軍に利用され、神社が若者を戦地に送り出すこととなってしまった。本来の神道を忘れてはならない。思い出すことでC級戦犯となってしまう復員した息子。大事なことを台詞と録音で何度も聞かせる演出が上手い。たくましく戦後を乗りきる庶民達を笑いで包み、済んだこととして前向きさを描くかと思いきや、続く戦争の悲劇を描いている。私の両親も戦争体験を語ろうとはしなかった。戦争体験者が少なくなる今、知らない世代が戦争を起こす。井上ひさしの鋭さ怖さを思い知る。2022/05/04
東谷くまみ
37
帰ってきた英霊が残したもの―何作か続けて読んできた井上作品の中で最も悲しかった。戦場でのチームメイトの儚い最期…喜劇の中で淡々と語られるそれはその対比も相まって思わず涙が溢れた。健太郎の口を借りて語られる井上先生の「過去の失敗を記憶していない人間の未来は暗いよ」という言葉は、考えたくないことは忘れたフリをする今の日本人に向けて放たれる鋭い刃。戦争のことはもちろん、福島出身の私は原発のことも頭に浮かぶ。恐怖に打ち克ち奮い立たせた健太郎の気高い覚悟、残される人に託した思いに胸を打たれ、→2021/11/28
門哉 彗遙
6
脚本を読んだだけでは、なぜこれが名作なのか、いまいち分からなかった。彼の作品は不可侵なスタンダードになっているからだろうか。今、ジャニーズが性暴力で全方位から非難されている。僕ももう解散すれば良いのにとも思う。しかし、この井上ひさしだって家庭内暴力で有名ではないか。作品が煮詰まると妻を殴っていたとか。締め切りを気にする編集者も「奥さん、殴られてやってください」と言っていたとか。こんなん許されるんやろか。2023/09/17
法水
5
観劇後に読了。「父さん、ついこのあいだおこったことを忘れちゃだめだ、忘れたふりをしちゃなおいけない。過去の失敗を記憶していない人間の未来は暗いよ。なぜって同じ失敗をまた繰り返すにきまっているからね」。健太郎のこの台詞に尽きる。2023/08/16




