内容説明
遣唐副使として唐に渡ったまま行方不明となった父・石根(いわね)を求め、道麻呂(みちまろ)はかの地へ赴いた。二十数年の歳月を経て、ようやく出会った父は、あまりにもおぞましい姿に変わり果て……。 直木賞受賞の表題作のほか、オール新人杯第一回受賞作「子守りの殿」、異色作「水妖記」など初期の作品六編を収録。直木賞受賞までの歴史小説をすべて網羅した、巨匠の原点!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NICK6
5
残酷もので知られる著者。初。直木賞。遣唐使の時代。著者独自の知識と文学観を硬質に実装。聞きなれない語彙や表現も容赦ない。でも、遠方異郷のしかも荘重なる皇帝国家。その重量感を伝えるのに効果大。愛する妻と子。自己顕示欲強く異国で重責果たし名と実を上げたい男。降り懸る、生きる残酷。それは大戦や復讐等、マクロな体系からは作られず、むしろ日常性の場所から作られる。瞬間の地獄、継続する地獄、積み上がる地獄。解放後にはそれ以上の、「生き続ける事の地獄」が待ちうける。血と骨と皮膚、何より心の崩壊。まったく凄まじい小説だ 2022/12/28
K子
1
短編集ですが、表題作は第35回直木賞受賞作。 『燈台鬼』『「あやつり組」由来記』『畏れ多くも将軍家』『水妖記』『不運功名譚』『子守の殿』の6作品収録。 『燈台鬼』は幻の直木賞受賞作と呼ばれていて、『消えた直木賞』にも収録されていたんでしたっけ。図書館で探してもなかなか見つけることができない、本当の幻の作品でした。が、今では電子書籍で購入することが可能なので、わざわざ遠方の図書館に足を運ばなくてもよくなりました。良き時代になったものです。 2019/05/27
藍兒堂
0
★★★
Kei Kobayashi
0
直木賞受賞作でありながら、故あって入手困難になった所謂「消えた直木賞」の一つ。シグルイで南條先生の作品を知ったが、どうしても読みたい作品だが手に入らなかった為、県立図書館の書庫からわざわざ探して来てもらった。南條先生の代名詞とも言うべき「残酷」を垣間見る作品だが、その残酷の中に一種の異常な美しさを秘めている。2011/10/14
シンチャイナ
0
消えた直木賞、男たちの足跡編で読む2018/05/08