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内容説明
野の支配権をめぐり幾多の民族が戦った時代を経て、イギリス最古にして最大の町ロンドンは富と権力を集中していった。シェイクスピアも描いた名君、商才にたけた市長らの活躍の一方で、対立が明らかになっていく町と農村。コベットに「おできの親玉」と呼ばれた町は、次第に野を呑み込んで、ついには国外にまで触手を伸ばす。ディケンズ、オーウェル、コンラッドらの作家にも登場願い、文学的色彩豊かに描き出した英国史。
目次
序章 野と町と英国
第1章 最初の町ロンドン
第2章 ジョン・ボールの悪夢―農民一揆
第3章 猫と市長と戦争と―ディック・フィッティントン
第4章 野の王と町の末娘―リアとコーディリア
第5章 野は海の彼方に
第6章 荒れた田園を行くコベット
第7章 「善きサマリア人」となるには―救貧法の問題
第8章 北と南
第9章 サバービア
第10章 リゾート
終章 明日は新しい野へ?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
15
歴史について背筋をしゃんと正して学ぶというより、読み物として楽しめた。ところどころにイギリス文学が挟まり、理解が深められるようになっている。「野」と「町」の物語とあるとおり、ロンドン市内と市外で住民の意識に差があり、対立することもあったという。郊外(Suburb)という単語の意味ひとつとっても、そんな裏があったとは、と驚かされた。2013/02/05
うえ
9
「597年ローマ教皇グレゴリウス一世がブリテン島に使節としてアウグスティヌスを送った時、ロンドンを宗教の本拠地にするつもりだったが、ロンドン市民がこれを拒絶したために、やむなく東方80キロほどのところのカンタベリーに大聖堂を建て、大司教の座を設けた。そしてこれは現在でも変わっていない…ロンドン市民は日常生活に必要な教会を設けることには反対しなかったが、宗教権力の中核を置くことには賛成しなかったのである…大学も…二つの町、オックスフォードとケンブリッジに作られ、19世紀になるまで、ロンドンに大学はなかった」2019/04/07
kokada_jnet
7
この著者ならではの、文学史と社会史の狭間の好著。ウィルキー・コリンズ『月長石』中の、「人生の重大な決断時に『ロビンソン・クルーソー』を開いて解答を探す執事」とか。こまかいクスグリ多数で、読んでいて気持ちよくなる。2013/06/14
Haruka Fukuhara
5
日本とは全然歴史も社会も感性も違う国だというような気がした。部分的には好きだけど全面的には賛美できないと思った。イギリスはEUを離脱して4つに分かれてしまうんだろうか。ロンドンも独立したがっているという嘘みたいな話もあったけど。もうちょっとちゃんとした歴史の本と今のイギリス政治の本でいい本があれば読んでみたい。2017/03/05
ネムル
3
英国文学から見る、ロンドンの都市拡大について。スプロールという無秩序拡散を意味する語が、もともとは「行儀の悪い格好で寝そべる。手足をぶざまに投げ出して横たわる」ことだという点からもう、随所に皮肉が効いていて楽しい。近現代のアメリカとは全く異なるサバーブのあり方から、ディケンズやフォースターをより味わうための基礎知識を得る。2015/04/01