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内容説明
世紀末から一九二〇年代、パリの文壇にあった二人の作家は、政治思想や倫理道徳の価値基準とは無縁の世界を生き、書き綴った。それが過ぎ去った時代の証言としてたえず読み返されるのはなぜか。小説だけがすくいとることのできる時代精神のありよう、すなわち「風俗」があざやかに映し出されているからである。本書は「風俗を反映しつつそれ自体が風俗的存在でもある文学」という観点から作品を読み、時代の中に位置づける試みである。
目次
第1章 出逢い(プルーストからコレットへ―一通の手紙 女たちの風俗 2人のココット、2人の作家 サロンの風景 プルースト、コレット、ウィリー)
第2章 男と女(『バイロイトとホモセクシュアリティ』 小説に描かれた性風俗 風俗の中の作家 ソドムの地獄 神々の黄昏)
第3章 世紀末から1920年代へ(アンドレ・ジッドの手紙 コレットの「失われた時」 プルーストのスポーツ娘と「新しい女」コレット 身体と言葉 1920年代の娘たち、あるいは『牝猫』)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
62
プルーストとコレットが風俗をどう扱ったかについて述べた本。彼らの描くココットは、『椿姫』や『ナナ』に比べると古い道徳から解放され社交界の花形として生きており、作品中で時の浸食を免れた座標軸の役割を果たしているらしい。コレットは商魂逞しい夫の影響下で大衆受けする小説を書き、背徳や倒錯を物ともしない新しい女性像を創った。プルーストは、神話や絵画と比較されるような深層に根を張る人物を登場させながら、むしろ彼らに表層的な風俗を纏わせ、それによって時に侵食されていく多面的な人物像を創りだした。研究すれば奥が深そう。2015/11/12
かふ
21
プルーストは大作家とイメージだがコレットはあまり良く知らなかった。プルーストの時代に風俗小説を書いていたが、そのプルーストからコレット『踊り子ミツ』を読んで感動したという手紙を貰う。さらにアンドレ・ジッドからも。コレット『シュリ』を読んで無駄な文章が一つもないと褒められる。このフランス文学ニ大巨匠を虜にするコレットとは何者なのか?以下、https://note.com/aoyadokari/n/nb43653242c6a2021/12/22
吟遊
13
プルーストとコレットを同じ地平で扱い、時代を映し、予告さえもする「風俗小説」として読んでみよう、という試み。小説家に上も下もない、という序言があるものの、紙幅の3/4くらいがプルーストの分析に割かれている(褒めてもいる)のは、やはり存在の巨大さゆえか。コレットは軽快な恋愛小説作家として、その面白みのある評伝も加えてさっと描かれる。流れとしては、プルースト(『失われた時を求めて』の描く〜1919年)から、1920年代「狂乱の時代」を代表するコレットという風につながっていく。2017/03/26
nranjen
6
プルースト8割コレット2割な感じ。コレットについてもう少し知りたかった…。確かに第二次大戦前のパリの風俗を性的空間ととらえて描くにはやはりプルーストに力点がいってしまうのはしかたないけれど。ただ、二人が直接出会うという接点があったこと(面白い!)、プルーストからコレットの手紙について触れられているのが自分にとって新情報だった。プルーストが絶賛するコレットの作品を読んでみたい。コレットの翻訳はやっぱり絶版なのだ。書店で入手できず残念だけど、図書館には在庫があり、ありがたし。2019/02/20
ロピケ
6
プルーストとコレット。面識があったなんて、この本を読むまでは考えもしなかった。読み始めて、工藤さんが論を進める上での必要上、二人の作品のあらすじが書かれているため、「作品をまずは読むべきだったか」とも思ったが、コレットの『シェリ』はともかく、プルーストの『失われた時をもとめて』は、死ぬまでの間に読み切る自信が無いので、むしろ、どんな内容なのか分かって良かったかなと。興味はあったものの、どちらもなじみの薄い作家にも関わらず、結局面白く読めた。『シェリ』を読もう!『スワン家のほうへⅠ』もぼちぼち読もうかな。2012/04/27
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