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内容説明
主人公津田とその妻お延の生き方を中心としてエゴイズムの問題に容赦なく光をあてた『明暗』は漱石が生涯の最後に到達した思想「則天去私」の文学的実践だった.作者の死によって未完に終ったが,想像力豊かに作品の構造を読みとくことで『明暗』の「その後」を考えることは必ずしも不可能ではない. (解説大江健三郎・注三好行雄)
目次
目 次
明 暗
解 説 (大江健三郎)
注 (三 好 行 雄)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
94
誰もが持っているエゴイズム。それは世知辛い世の中を生きやすくすることもあれば、軋轢を生むこともある。そこに折り合いをつけるにはどうすればいいか?見栄坊だが健気なお延さんが可哀想でな・・・。一方、自己中心的で自分の都合の悪い事は避け続ける津田が腹立ってしゃーない!今の時代じゃ、奥さんに穀潰しと追い出されるタイプの男やで!そして人々から軽蔑されていると身を持って理解しているがためにそう振舞うが、誰よりも率直で、同時にその最たる者である津田の傲慢さを指摘した小林は、シャイロックやスメルジャコフを連想させました。2018/07/03
NAO
63
冒頭から痔の手術なんて、人が他人にはおおっぴらには見せることの出来ない部分をこれから抉り出していくという暗示としてもすごすぎる。金銭問題に絡む、津田の妹に対するかたくなさや、吉川夫人と津田の妙になれあったような付き合い、そして、吉川夫人の津田夫妻への干渉。自分と他人とのつながりのいびつさと、そこに入り込んでくる自意識には、常に自分が中心にあって何事も自分の思い通りにならないと気が済まないというおごりがあるようだ。漱石はどういう結末を考えていたのだろう。この先を読めないことが何とも残念。 2016/11/21
ころこ
28
作中で言及があるようにドストエフスキーに影響を受けているのは間違いないでしょう。同じ未完の『カラマーゾフの兄弟』が殺人事件の犯人を捜す探偵小説の様に、本作も探偵小説の様です。だが殺人犯を捜すわけではありません。中心が津田なのは言うまでもありませんが、確認したいのは、主人公は妻お延ではないかということです。津田が入院している間、お延は岡本家と芝居の間に会話を交わし、吉川夫人とも交流をします。次いで津田の友人小林と話した後、いよいよ義妹お秀との会話の場面へと移ります。微に入り細に入り気持ちの揺れが描かれており2020/12/22
テツ
22
夏目漱石の最期の作品。そして彼の死により未完となった作品。たった数日間の出来事しか描かれていないのにそこに登場する人々の打算とエゴに突き動かされた他者とのやり取りが濃密すぎて息苦しくなるくらい。これを読んで息苦しく浅ましいと思うということは自分自身の他者とのつきあい方にもきっと同じような思いが多分に含まれているからなんだろうな。他者との繋がり。他者への干渉。表面上では他人のためのように言いつつも内心では自分の意思に沿うように他者を、世界を動かしたいと望む傲慢さ。タイトルの『明暗』の意味は深い。2016/12/24
H2A
18
夏目漱石の最後の小説。1週間程度の短い時間の中に、主人公津田をめぐる人々の丁々発止のやりとり、闘いを描いた。長大な作品だが不思議と飽きさせず、しかも難解さも感じさせない。ほとんど魔法のごとき練達ぶり。「則天去私」かどうかわからないが、視点人物を切り替えながら息苦しい人間模様を離れた視点で鳥瞰する。最終作でこの力強さ。そしてふっつりと途切れるこの小説に満足感はあっても不足感は感じなかった。2024/05/05
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