内容説明
貧しく孤独な少年ジョバンニが、親友カムパネルラと銀河鉄道に乗って美しく悲しい夜空の旅をする、永遠の未完成の傑作である『銀河鉄道の夜』や、『よだかの星』『オツベルと象』『セロ弾きのゴーシュ』など、イーハトーヴォの切なく多彩な世界に、『北守将軍と三人兄弟の医者』『饑餓陣営』『ビジテリアン大祭』を加えた14編を収録。賢治童話の豊饒な味わいをあますところなく集めた一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
615
学生時代以来、何度目かの再読。表題作以外にも「セロ弾きのゴーシュ」など計14篇を収録。「銀河鉄道の夜」こそは、宮沢賢治の最高傑作だ。詩集『春と修羅』も、銀河や天体、あるいは結晶体などの透明で硬質な詩的イメージに溢れているが、ここでは散文でそれを実現している。また、まぎれもない幻想文学なのだが、一般に幻想文学は変幻自在の柔らかさや自由さに特徴を持つが、ここではそれがきわめて硬質であることで独自の世界を構成している。天のカササギや十字架、ハレルヤの声、これほど神々しいイメージに彩られた鎮魂歌があっただろうか。2013/01/27
青葉麒麟
427
かなり読み易かった。『よだかの星』は何度読んでも切なくて可哀想になる。しかしよだかってそんなに不細工なのかな?2012/03/01
ソルティ
355
賢治さんの文章は結構読みにくい。暴言や意地悪や理不尽な労働とか怖い要素もあり今の子供には現代解釈にした方がいいような童話が多い。それでも「銀河鉄道の夜」「セロ弾きのゴーシュ」はきっと賢治さんも力を入れたのだろう、このままの世界観を保った方がいいと思える。全体に澄んだ空気の夜のような綺麗な感覚。だから宮沢賢治が好きなんだ。「「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」」2019/12/08
ehirano1
317
「999」のような電車に乗車して著者の死生観に触れる旅を楽しみました。車掌やメーテルはいませんが、「理想」と「現実」とのギャップをファンタジックに味わいながら『本当のさいわい(幸い)とは何なのか』を考える旅でした。2023/11/24
ののこいちご
309
胸がギュッと締め付けられる。綺麗な話だとは思う。しかし苦しいですね。このやりきれなさから逃れたい気持ちになりました。2022/06/07