内容説明
合衆国大統領の実兄がリビアに誘拐された。自国側の大物テロリストがCIAの手に落ちたと考えたリビアが報復に出たのだ。しかし、CIAはその件には一切関与していなかった。一触即発の事態を収拾すべく、ホワイトハウスは“モルディダ・マン”を雇った――国際紛争のはざまで大国を手玉にとる男どもを描き、巨匠が真骨頂を示す傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
maja
22
視察旅行を模したリビアに合衆国大統領の兄が巧みに拉致された。そして、リビア側から他国経由で届いたメッセージにアメリカ側は虚をつかれる。人質交換の要求に手元にない男を在ることにして交渉を進めていく裏では大統領直々のラインが発動して・・。関係者周辺、政治を含めた混みいった綱渡りのような謀略戦が。面白くてロス・トーマスから抜けられない。もう読めない作品もあって焦ってくる。図書館取り寄せで読了。再読。2025/01/29
harass
14
先日読んだ「女刑事の死」の作家の本の手持ち分を再読する。国際謀略スリラーもの。米大統領の弟がリビアに誘拐された。リビアが支援するテロリストが誘拐されて、CIAが手を出したと判断し報復の誘拐だった。しかしCIAはまったく関与していない。この事態を収拾すべく合衆国はモルディダ・マンとあだ名される元上院議員を雇うのだが。キャラが濃く会話が抜群によく展開が予測不可なのが面白い。解説にもよるがこの作家はプロットをまったく作らないで書きだすのだという。プロットを立てるのが苦手なのだと。独特の緊張感あるシーンの秘密か。2013/08/05
duzzmundo
9
再読。影のフィクサーである大統領の兄が誘拐された。奪回のために選ばれたのは、マルディダ・マンの通り名で知られる元下院議員。各国諜報員や犯罪者が入り乱れ、危うい取引は進んでいくーーという感じの話です。楽しく読みました。ロストーを読み返そう企画もこれにて終了。所持しているものは読み終わってしまいました。やはり台詞が巧い作家はいいですね。今度はエルモア・レナードでも読み返そうかと検討中。2023/11/27
duzzmundo
2
個人的には図書館で借りられるロス・トーマス絶版本の最後の一冊。おもしろかった。あとがきにあるように、油断してるとプロットを見失うので集中力が必要だけど、そのぶん濃密な読書体験という感じ。できることならすべて手元に置きたいので復刊してもらえないかなと、早川書房さん。2017/10/08
西村章
1
登場人物たちの行動原理や関係性が一筋縄ではいかず、その曖昧模糊とした含みが平易に解き明かされない、いつものロス・トーマスなので、ちょっとした台詞の繰り返しや、少し前に出てきた状況をヒントに「なんでこうなっていくんだ?」と読み解きながらページを繰り、終盤近くになって全体像が一気にピシピシと繋がってくるのがロス・トーマスの醍醐味。とくに今回は、(なんでこうなるの、という)終盤の激しいアクションが終わって、さらにいちばん最後のひとヒネりで「ほう!」という、これもまたロス・トーマスの醍醐味。うん、面白かったです。2023/06/24