新潮文庫<br> 小説のたくらみ、知の楽しみ

個数:1
紙書籍版価格
¥481
  • 電子書籍
  • Reader

新潮文庫
小説のたくらみ、知の楽しみ

  • 著者名:大江健三郎
  • 価格 ¥539(本体¥490)
  • 新潮社(2014/03発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101126166

ファイル: /

内容説明

障害のある息子との共生を祈念したこの二十年、無力な父親は、小説のたくらみを通じて初めて、現在ここにある自分をのりこえ、新しい自分を達成して、生き方の定稿を作ることができた……。日々の読書から、また創作の現場から、かつてなく自己の生活と精神の内情をさらけだした注目の長編エッセイ「小説のたくらみ、知の楽しみ」に、「核時代のユートピア」他の手紙と提言を併録。

目次

1 小説のたくらみ、知の楽しみ(「異化」の話から、ヴァネガットの恐しい幻想へ 文芸理論家フライと作家マラムッドが、「モーゼの五書」を読みなおす 大岡昇平とプリテンのレクイエムとを結ぶ、そしてキリスト教徒ケナン ジョン・チーヴァーの『短篇大全』と、ルイーズ・ブルックスの自伝をめぐって ブレイクを媒介に読みとる 甘ったれ、横着、邪悪な精神、ということからヴォネガットのセリーヌ論へ フォークナーとジェームズ・ジョーンズをウィリアム・スタイロンが悼む 芥川賞の私的に回顧から、林達夫のヒッピー評価と、ケルアック評伝へ 芥川賞辞任の余波から「生の紡鐘形」理論、そしてクシナダヒメ・シンドローム説へ ほか)
2 手紙と提言(格時代のユートピア 破壊されえぬことの顕現へ向けて)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

Vakira

47
「すべての人間は、生まれつき知ることを欲する」これはアリストテレスが「形而上学」の中で言った言葉。アリストテレスさんは紀元前350年の頃に活躍した「万物の祖」と言われた方。人間は知能、感覚から記憶、経験知、技術知を得て知恵に進むと説きました。知を豊かにすることで人間の「生」に繋がるって事なのでしょう。さてこの本、大江健三郎さんの小説家としての生活と精神の内情をさらけ出したもの。小説の存在意義を考えさせられました。読者は作者の創った宇宙で違った人生を傍観者、時には主人公となって疑似体験。創造と覚醒それがいい2020/12/30

スミス市松

15
ヴォネガットやティム・オブライエン、ケルアックらを饒舌に語りつつそれと絡めて自作を言及する姿は新鮮そのもので、著者へのイメージが変わった。本書が書かれたのは冷戦末期。まだ大きな恐怖が世界を席巻していた頃である。そして芸術家たちはその大きな恐怖を想像力の拠り所としていた。だが現代は違う。大きな恐怖は解体され、外部──内部の遠近感を喪失し、いつのまにか周囲には無数の小さき恐怖たちが絶えず蠢いている。ただし両者は同じ穴のムジナである。「失われた20年」で成人した私は、この本が語り語れないものを考えていきたい。2010/11/30

フリウリ

12
大岡昇平の「成城だより」でも、しばしば登場する大江健三郎。同時期に新潮社の「波」(1983~84)に連載されていたエッセイ。82年「レインツリー~」、83年「新しき人よ~」を執筆後、米国で生活するなかでの、フォークナー、ヴォネガット、ブレイク、オーデン、イエイツ、セリーヌ、スナイダーなど、大江の読書と創作がリンクするさまを、垣間見ることができます。80年代の米ソ冷戦における核危機もテーマの一つですが、現実的には核戦争、原子力への脅威は現在のほうが差し迫っている…なのに危機感は薄いのはなぜ?? 72025/03/25

やまねっと

8
昭和後期のエッセイ集。書いていることの2割も理解できていないが、外国語と日本語との調和もみて取れるが、不勉強なため、理解できない単語も多数あった。小説家が自分の立ち位置とかを考えながら小説を書いているのは新鮮に感じた。 本書でも核社会に対しての警鐘を鳴らしているが、今の令和を大江健三郎はどうみているのだろう。結構ご高齢だが、今大江健三郎を読むにはどうすればよいか誰かご教示願いたい。2021/05/25

あかつや

8
再読。小説の仕掛け「たくらみ」について、得意の引用を駆使して語ったエッセイ。本人も自覚があるようだが、大江ってのは思い込みの作家だなあとつくづく思う。それもただ思い込むだけでなく、恩師の勧めがあったとはいえこれもまた思い込みに基づく独自の勉強法によって、深く、誠実に思い込む。語られる「小説のたくらみ」も自作についてはともかく、他の作家のものについてはほんとかなあと疑われるような思い込みに満ちたものだ。でもそれがものすごく魅力的に見えて、こちらの好奇心をくすぐってくる。大江きっかけで読んだ本たくさんあるよ。2020/03/12

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/452761
  • ご注意事項