内容説明
「やっぱりあいづ又三郎だぞ」谷川の岸の小学校に風のように現われ去っていった転校生に対する、子供たちの親しみと恐れのいりまじった気持を生き生きと描く表題作や、「やまなし」「二十六夜」「祭の晩」「グスコーブドリの伝記」など16編を収録。多くの人々を魅了しつづける賢治童話の世界から、自然の息づきの中で生きる小動物や子供たちの微妙な心の動きを活写する作品を中心に紹介。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
522
何度目かの再読。わが生涯の愛読書のうちの1冊。冒頭の「やまなし」からして、もう他には絶対に類を見ない賢治固有の世界に捉えられる。文庫本にしてわずか7ページしかないのだが、ここには生の煌めきと戸惑い、そしてそこにふと影を差す死の世界とがほんのわずかな接点の中に同居する。しかも、賢治はそれを「幻燈」として私たちに見せるのだ。表題作「風の又三郎」もやはり日常と紙一重にある異世界だろう。「どっどど どどうど…」の風の音に始まり、やはり風の音になかに消えてゆく世界だ。こんな体験は、まさにここだけにしかない。2020/01/18
しゅら
244
賢治さんの本を児童書以外で読んだのは初。やっぱり表現がキレイでステキですね。グスコーブドリの伝記とか衝撃な生涯を送ってるなーとなんだかいたたまれなくなりました。モデルは自分なのでしょうね。イーハトーブって言葉の意味が初めて分かりました。賢治さんの創作の言葉で、自分のファンタジーな作品の中における岩手県の名称、みたいです。「気分がいいと云ったって、結局豚の気分だから、苹果のようにさくさくし、青空のように光るわけではもちろんない。これは灰色の気分である。灰色にしてややつめたく、透明なるところの気分である」2019/06/24
ykmmr (^_^)
135
彼の童話集。『銀河鉄道の夜』などとは違う、故郷岩手の人物や動物に焦点を当てている。兎などの動物は勿論、蜘蛛や蛞蝓にまで生命を吹き込み、その生き方も尊重。人間作品も含めて、背景の文章を読んだだけで、行ったこともない岩手の風景が頭に浮かぶ。解説の通り、彼らしい作品たちなのではないか。表題作の又三郎については、まずは物語を示す冒頭。突然、風のようにスッと現れて、そのクラスに新たな風を吹かせつつも、問題にも切り込んで解決に導く。よくあるヒーロー的な作品だが、文学性・童話性も入っていて大作である。2021/12/04
KAZOO
135
賢治の父親を描いた「銀河鉄道の父」と絵本「貝の火」を読んで触発されての再読です。やはり絵本とは大分イメージが異なります。原文の方がかなりきめ細かく書かれていて童話にむいているのかなあという気もしました。大人向きの作品も多いような感じです。ただやはり童話と原文を比較して読んでいくのもある意味楽しい気もしました。イメージとしてはますむらひろしさんのコミック作品が自分的にはあっている気がします。2018/05/31
はっせー
125
神秘的な本が好きな人におすすめの本になっている!今年の読み始めの本。宮沢賢治さんというと神秘的なファンタジーをイメージする人が多い。この作品もファンタジー要素がある。だがそれだけではなくミルクレープのように何層にも重なった厚みを感じられる。宮沢賢治さん自身がいろんな肩書があり色んな階層を飛び回っていたひとであろう。そんな人が児童文学を書くということはその経験を凝縮させて子供にもわかりやすい作品にしている。この本は短篇集となっておりどの作品が好きかを語るのが楽しい作品になっている!2023/01/04




