内容説明
「赤頭巾ちゃん」にしても「眠れる森の美女」にしても、本来は血なまぐさくセクシャルで残酷な民話だった。ペローの童話はその味わいを充分に残しながら、一方では皮肉な人間観察や教訓をおりこみ、童話文学の先駆的作品となった。この残酷で異様なメルヘンの世界を、澁澤龍彦は流麗な訳文で、いきいきと甦らせた。大人も子供もともに楽しめる決定版童話集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
93
【猫本を読もう 読書会】残酷さを秘めたペローの童話。澁澤の流麗な訳。そこに片山健の装画と挿絵。すごいインパクトがあるのですよ、この童話集。お馴染みのお話が血生臭くて、みだらなものに思えます。毒を求める大人向け。小さなお子さまはページをめくってはいけませんよ。例えば『赤ずきんちゃん』は裸だし、『サンドリヨンあるいは小さなガラスの上靴』(シンデレラですね)では、娘がガラスの靴を履かせてもらっているときに自らスカートをめくり上げています。一話ごとに添えられた澁澤のご教訓がまたちょっと皮肉っぽくていいんです。2019/02/09
YM
86
澁澤先生は教えてくれる。重要なのは心なのだと。相手を思いやるやさしい心さえあれば何でもできると。しかし、若さや美しさもバカにはできないらしい。確かにきっかけは必要だ。よし、髪を切ろう。2015/04/02
ヴェネツィア
79
17世紀末に出版されたペロ-の童話集だが、澁澤龍彦の訳に片山健のちょっとエロティックな挿絵の付いた、なかなかに豪華な本。「赤ずきん」や「サンドリヨン」など、グリムと同根のものもいくつかあって興味深い。あとがきで、澁澤はグリムに比してペローを「古拙の味わい」と語っているが、プリミティブな残酷さを多分に残したグリム版よりも、ルイ14世時代の宮廷人だったペローの方がむしろ優雅で洗練されているともいえる。例えば、よく知られた「シンデレラ」の仙女やカボチャの馬車などは、実はペロー版にしか登場しないといった風に。2012/11/17
こばまり
59
お馴染みの童話が記憶よりも残酷でエロティック。しかも澁澤龍彦訳の贅沢品。しかも初出は『anan』とな。表紙のアイパッチねこは元より、はだかんぼで虚ろな表情をしたお姫様たちのイラストもよいです。2015/02/11
Mishima
36
再読。イラストに惹かれて今度は紙の本にて。グリム童話で見かける「ラプンツェル」「シンデレラ」「赤ずきん」などなどをシャルル•ベローのアダルトティストで。どこか神話に通ずるシンプルさと率直性、毒気とエロスを調合して。9編の物語収録。挿絵もいい。アンバランスな肢体と見たものを落ち着かなくさせるような表情の人物たち。エロティックなロリータは豊満な肉体を持ち不自由なポーズで中途半端に微笑む。もしくはしどけない無表情でぼんやりと。物語によっては至極残酷な行く末にて挿絵もまたドキツさを増し。2022/05/27