脱出

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脱出

  • 著者名:吉村昭【著】
  • 価格 ¥572(本体¥520)
  • 新潮社(2013/06発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101117249

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内容説明

昭和20年夏、敗戦へと雪崩れおちる日本の、辺境ともいうべき地に生きる人々の生き様を通し、〈昭和〉の転換点を見つめた作品集。突然のソ連参戦で宗谷海峡を封鎖された南樺太の一漁村の村人の、危険な脱出行を描く表題作。撃沈された沖縄からの学童疎開船・対馬丸に乗船していた一中学生の転変をたどる「他人の城」。東大寺の仏像疎開作業に従事する僧侶と囚人たちをめぐる「焔髪」など5編。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yoshida

158
大東亜戦争の末期から敗戦後迄の短編集。吉村昭氏の徹底した取材と、感情を抑えた文章は強く心に訴える。樺太からの引き揚げと、全てを喪った人々の暮し。対馬丸事件で知られる沖縄からの疎開。実は米軍により撃沈されたのは対馬丸だけと知り驚く。撃沈された対馬丸からの兄弟の必死の生還。そして描かれる、対馬丸事件からのその後。終戦後に沖縄に戻った人々を待つあまりに変わった故郷。サイパン島での民間人の彷徨。そして大場大尉達の秩序ある投降。吉村昭氏の作品を読むと自分の無知さを痛感する。戦争の記録を忘れぬよう、読まねばならない。2017/10/01

kinkin

90
5篇からなる短編集。太平洋戦争末期の様々な脱出劇。フィクションとして読んだが描かれた内容に近い話はたくさんあったと思う。宗谷海峡の封鎖におかれた漁民、仏像を空爆で傷つかないように奔走する僧侶、四国の小さな島の脱出、対馬丸の悲劇、南方のアメリカの基地となった島での出来事。どれも著者の冷徹で感情を高ぶらせない書き方だ。暗い話が多いので読了後は疲れた。しかし80年前にこのような話があったことは心に留めておきたい。2024/03/15

モルク

87
終戦前後それぞれの地から脱出せざるを得なかった少年たちを描く5つの短編集。どこか他人事だったものが現実に自身に危機が迫りまわりの人が死んでいく。その極限状態で死の恐怖と戦いながら脱出、逃亡をした少年たち。中でもソ連の参戦で南樺太の村民が図る「脱出」、沖縄からの学童疎開船対馬丸が魚雷による襲撃で沈没、そこから生き延びた少年を描く「他人の城」サイパン在住の一家が米軍の襲撃から逃げ生き延びようとする姿を描く「珊瑚礁」が印象的。骨太な短編集。2019/11/24

ehirano1

86
綿密な調査もさることながら、なにより抑揚のない淡々とした記述がよりリアルさを感じさせます。しかしながら本書の読み解きは容易ではなく(当方にとって・・・)、秀逸な解説に頼らざるを得ませんでしたが、ひとつの読み解きを他力なりにも得られ理解できたたことで、本書の意図を堪能することができました。2017/09/16

アッシュ姉

81
吉村さん七冊目。終戦時、過酷な状況下におかれた少年たちの目線で綴られる全五編。ある日突然故郷を追われ、命からがら脱出した先も安全平穏とは程遠い環境。市民の生活にまで広くおよび、戦争が終わっても続く悲劇には言葉にし尽くせないものがあった。なかでも、疎開船が撃沈され何日も漂流した沖縄の中学生の転変をたどる「他人の城」がもっとも印象に残った。極限状態におかれた人間の剥き出しの本性に震撼とする。徹底した史実調査を基に感情表現を抑えた筆致がより真に迫るものがあった。2017/02/10

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