内容説明
『三匹の蟹』で「群像新人賞」「芥川賞」両賞を受賞し、戦後日本文学史の中でも異例の衝撃的デビューをした大庭みな子の、作家活動20年の頂点を示す、深い人間理解と鋭い人生凝視の力作『啼く鳥の』。野間文芸賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
24
小説家の妻の稼ぎをあてにして仕事を辞めてしまう男や、海外で一仕事終えたあと修道院に籠もってしまう建築家の男など、男らしくない男たちのへなへなした生き方が魅力的だし、それをユーモアを交えて温かく見守る著者の視点もすてきで、いろいろ思うところはあってもとりあえず何事もなかったようにだらだらと、のほほんと交わされる会話につい引き込まれる。多くの場合小説家は登場人物の一挙一動を支配しているが、ここでは著者自身が、成り行きもわからないまま人物たちに自由に動き回らせているように思えて、その脱力感が面白かった。2025/02/05
龍國竣/リュウゴク
2
機知に富んだ会話が読ませる。夫婦を始めとした血の繋がり、又は土地による繋がりが、理性的な会話文によって洗練された関係になる。その中には、男女の、親子の様々な名言が含まれている。複雑な背景を仰々しくしない理知的な配置にはっきりする、個々人の生き方がある。 2012/07/13