内容説明
戦争中には、戦死にまつわる多くの「美談」がつくられた。ある日、焼跡で死んだ男の話を耳にした。その死に「いのちがけのこっけいさ」を感じた時、数々の「美談」に影がさすのを覚えた。そして自分の内の「ユーモアの鎖国」が解け始めたのだ。戦中から今日までに出会った大小の出来事の意味を読みとり、時代と人間のかかわりを骨太にとらえた、エピソードでつづる自分史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
23
石垣りんさんの詩と随筆。幼い頃に母に死なれ、戦争を経験し、貧しい中、学校を卒業して銀行の事務員として働きながら、詩を書き続けた。語り口はソフトだけれど、その半生、国や社会に対する眼差し、思いは深い。2015/02/28
チェアー
14
女性、戦争、独り、仕事、老い。言葉や詩よりも、ジェンダーの眼差しを強く感じる。自分を理解するふりをする人たちへの不信の目も。食べるために働くが、その時間は魂を売り渡したようなもので、自分はそこにはいない。仕事から解放されて、心も体も解放されて、言葉が出てくるようになる。彼女の詩は抑圧されたなかから勢いよく飛び出してくるようなものなのかも。2019/05/14
ケン五
11
石垣りんさんの詩は、石垣りんさんの体の中にある「アアデモナイ」「コウデモナイ」が、目や口や皮膚から滲み出てきて言葉になっている感じがする。読むと自分の日々の営みが愛おしく思えてくる。2011/12/02
niki
6
「私は、長い間毎日仕事をしてきたけれど、あれは仕事だったろうか?がまんではなかったのだろうか」 詩人である石垣りんがどんな気持ちで銀行に勤めていたのか、以前から不思議でたまらなかった。本書で謎がとけた。仕事に対する思いが私と同じで、とてもとても勇気付けられた。 詩人は銀行業務を否定し、あくまで生活の為にがまんしていたと書いている。 家族を養うためには稼がなければならないけれど、自分が毎日行っている業務に疑問を持たずにはいられない。考えても仕方がないとはわかっている、けれど、人生は一度きりなのに。2023/06/16
あつ子🌼
5
実家の本棚発掘本。懐かしい。 りんさんの詩が好きだった、あの頃の私。戻れ。2020/11/23