内容説明
〔競馬シリーズ〕物理教師ジョナサンは、ある日友人からひそかに三本のコンピュータのテープを渡された。数日後、その友人は事故死し、ジョナサンも命を狙われる……テープには、三回に一回は当たるという驚くべき確率の勝馬予想システムが組み込まれていたのだ。テープをめぐる熾烈な争奪戦を新機軸の構成で描く。/掲出の書影は底本のものです
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
61
なんと3回に1回は当たるという驚くべき確率の勝馬予想システムが組み込まれていたテープを狙ってくるのは、悪魔のように冷酷無比、残虐非道な男。この犯人に狙われ続ける緊迫感がスリリングなのだが、ラストがなんだかなあなのだ。1部がとりあえずの平穏で終わったように、2部の平穏も一時的なものだという暗示なのだろうか。2023/02/03
bookkeeper
31
★★★★☆ 再読。競馬シリーズ初にして唯一、作中で主人公が交代する異色作。教師のジョナサンは友人からプログラムを入手する。それは1/3の確率で勝馬を予想するシステムだった…。同僚のテッドの困窮が気の毒だけど、後半の変身ぶりときたら…。 後半のウィリアムは、ジョナサンの仇敵との対決を迫られる。渡り鳥の様に気ままだった彼が、愛する人とやり甲斐のある仕事を得て、次第に信頼を勝ち得ていく過程が微笑ましい。敵の問答無用の凶暴さが怖いです。 「人生には金儲け以上に大切なものがある。多くはないが、いくつかある」2020/05/18
Willie the Wildcat
24
過去のデータと勘所。何事も日々の積み重ね・・・。想定確率を如何に高め、どのように意味づけるかも、個々人の主観。無論、”欲”が最後のエッセンス。金銭欲、技術欲が交錯する中、デリィ兄弟が印象深い。一歩引いた冷めた視線が共通項も、背負う哀しみの違いにより兄弟が求める”何か”に差異・・・。心の吐露のきっかけとなり、開いたセアラの心。蛇足だが、テープのアナログさが、”深み”を与えている気がしてならない。2014/12/06
本の蟲
15
有名翻訳ミステリ〈競馬シリーズ〉20作目。物理教師ジョナサンは、コンピュータに詳しい友人から3本のテープを渡される。それは友人が、ある依頼人から渡された資料を元に作成した競馬の勝敗予想プログラムだった。数日後、友人は不審な事故で亡くなり…。全ギャンブラーが夢見る仕組みをめぐるドタバタ。これまでも主人公の職業は騎手や調教師以外の方が多いくらいだが、馬と全く関わりのない人間は初めて。簡単に縁が切れない厄介事と、ある意味現実的な対応は少々盛り上がりに欠けた。初の2部構成といい、作者も色々試した実験作という印象2025/11/01
ぺぱごじら
15
人が自分の努力の成果を誰かに委ねたい衝動は、子孫繁栄の本能に近いくらいの強迫性を持つものなのかもしれません。『三回に一回は当たる競馬の予想システム』は『ただ乗り志向』を持ち、そのことを恥じるつもりのないある種の人々にとっては、たいへん魅力的なもの。犯罪心理が直線的で、ストーリーに意外性がないと『フランシスにしては』という、きっと本人にとっては『誉められてんだか貶されてんだか』複雑な評価を受けた作品ですが、ジョナサン・ウィリアム兄弟の価値観の相違と、それ故の互いへの敬意が浮き出たよい作品。2013-2132013/12/31




