内容説明
M**湖の湖底は水死者の集う墓場。不意の嵐にくつがえった釣船から放り出された漁師。自殺者。数百年昔、合戦に敗れ、湖水に追い落とされた落武者……。そして湖の底から屍蝋と化した水死体があがった──疎開中、姉を不幸な惨劇に陥れた湖を訪れる、弟の過去への旅路を描く表題作はじめ、剥製師の世界をあつかった「牡鹿の首」、ショービジネスに背を向けた演劇に賭けながら揺れ動く繊細な感情のゆくえを描写した「赤い弔旗」ほか二篇をおさめた傑作短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
63
短編集。壮大な歴史絵巻を眺めている長編に対して、著者の短編はどこか彼岸を思わせるような言葉の魔術によって構成される幻想世界と人間の情念を煮詰めたような話に大別できる。本書は後者を代表するような話ばかりが揃っている。東北の湖で発見された屍蠟から戦争に翻弄された過去が蘇る表題作を始め、個人的に一番きつかった何をなすこともなく年齢を重ねた女性の想いを描く「鏡の国への招待」、成功への階梯で捨てようとしたものが描かれる「赤い弔旗」と、どれも人間の心が作り出す地獄が顕現したようなものばかりで怖いながらも目が離せない。2025/12/30
雪紫
50
電子書籍にて読了。「水底の祭り」は表題作の名前だけどすべて読むと全部が愛する芸術絡めた鬱屈や戦後の環境が産む八つ当たりという地獄の「水底」で必死になってあがき踊らされる「祭り」に見えてきた・・・。皆川さんの幻想と文体なしに絵にすればほとんど地獄絵図の祭りだぞ・・・。幕切れが激強だし・・・。印象特に強めなのは表題作、「弔旗」、「鎖と罠」で。2025/10/28
shizuka
47
『蝶』よりはぐっと普通よりの少しホラーで少しミステリーな短編集。人間が生まれついたときから持っている「業」は、どんなに善人になろうとしても、ふとした時に鎌首もたげてくる。隙あらば出し抜いて、ヤツに復讐したいとか、痛い目見せたいとかそんな話が多かった。幼い頃の辛い経験や虐げられた記憶が腹の底でじんわり時機到来を待っている。だが本人はそんなこと全然きづいていない。けれど何かしらの出来事でスイッチが入ってしまう。その瞬間からの思考と気持ちの変わる様がリアルに書かれている。薄ら怖い。そう、まるでタイトルのように。2016/12/10
エドワード
26
人には、暗い情念というものがある。平凡な毎日を送る中で、ふと蘇る、記憶のかけら。たびたび描かれる、戦時中の疎開生活と、戦後の価値観の混乱。湖の底から上がった屍蠟死体に怯える男「水底の祭り」。ロンドン滞在の兄と、旅行添乗員の弟がかつて体験した悪夢「鎖と罠」。演劇、バレエ、実力とは何か、名声とは何か。夢を追い求めるうちに、道を見失っていく人々「紅い弔旗」「鏡の国への招待」。「牡鹿の首」の、剥製師の女性、麻緒に唯一強い生きる力を感じる。皆川博子さんのごく初期の、まさにめくるめくバロック真珠のような短編集だ。2017/11/08
秋良
5
勝手に湖を舞台にした連作短編かと思ってたら違った。もう少し幻想的な方が好きだったかな。2017/02/11
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