内容説明
〔競馬シリーズ〕交通事故で死んだ競馬写真家の自宅に、二日連続で強盗が押し入った。いったい何の目的で? 彼の遺した大量のフィルムを手にしたアマチュア写真家で騎手のノアは、自らの知識を駆使して、そこに潜む秘密の解明に挑んでゆく。複雑なパズルを解いたノアが目にした物は、驚くべき画像だった!/掲出の書影は底本のものです
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
bookkeeper
39
★★★★★ 再読。著名な写真家が事故死後に、自宅に強盗が入った。知人のよしみで家の片付けを手伝った主人公は謎のフィルムを発見する。 子供の頃幾つもの知人宅で世話して貰い、迷惑を掛けない様に、流されるままに生きるのが処世訓になっていた主人公。事件の調査と異父妹の捜索をする中で、人生と未来が開けていく。愛していた競馬の世界への別れは辛いけど、新たな出会いや仕事を見出していく過程がめちゃくちゃイイです。仄かな苦味と滋味…上質な地ビールの様な味わい。お勧め!「未来は自分の内にあって、認められるのを待っている」2020/01/31
背番号10@せばてん。
32
1992年7月10日読了。競馬シリーズ第19弾。ディック・フランシス、2010年永眠。自分に多大なる影響を与えてくれた、巨星に心より合掌。(2022年8月5日入力)1992/07/10
ぺぱごじら
19
本編は競馬場で落馬した騎手の無様な姿を、洗練された技術で撮り続けた写真家の死から始まるミステリだが、ぼくはサイドストーリである(けして親密ではない)祖母からの依頼と、主人公と祖母が交わす憎しみと哀しみを纏った何かを含む会話が好きだ。諸事情で『根なし草』のような借り暮らしを続け、そのことを大いに気に入っていた主人公が『騎手であること』に強迫的な執着を持つ矛盾から解き放されていく様子に、フランシスが引退に至るまでの心情はどの様なものだったのかと考えた。シリーズ中、好きな作品のトップ10に入る。2014-042014/01/09
本の蟲
17
有名翻訳ミステリ〈競馬シリーズ〉19作目。落馬の瞬間を克明に捉えることで、敬遠されつつ実力は誰もが認めていた競馬写真家のジョージ。交通事故で亡くなった彼の家が何者かに荒らされた。写真が趣味の騎手ノアは、偶然彼の遺品である大量の写真を手に入れるが…。今回のキーワードは写真。光の作用、現像や焼付けの原理、薬品の取扱いまで、写真に関する描写が細かい。これまでよくあった「悪党との対峙」「陰謀巻き込まれ」とは一味違い、流されるまま現状維持に努めていた主人公が、未来を見据えるようになる成長物語で大変良かった。2025/10/12
bapaksejahtera
12
主人公はヤク中の母親から養家をたらい回しにされて育った騎手。シリーズ数々の主人公としては異色の不遇さである。本人は障害騎手としての技量と共に、写真家として隠れた才能があった。畏敬していた競馬写真家の死とこれに続く家族の被災、義絶を受けた祖母からの自身の妹探索依頼、馬主から依頼される不正騎乗への葛藤が冒頭から描かれ、これらへの対処が本作のテーマとなる。次々替る養親からの人格陶冶や技能習得を始め都合の良い展開はあるが、米英の作品賞の栄に輝く前作「利腕」に続いて読んだ私の感覚では、こちらの方が遥かに気に入った。2022/03/08




