内容説明
十三年の結婚生活の後、愛のなくなった妻とわたしの人生は終っていた。死出の旅の途中で行きあった名も知らぬ土地、鐘ヶ関。日暮れの海に身を投じた二人だが、わたしだけが漁船に救われてしまった。鐘ヶ関では溺死者をエビス様と崇め、これを拾うと漁にありつけるという。わたしも「エビっさん」と呼ばれ、村に住みつくのだが……。民間伝承に材をとった表題作のほか、生と死の幻想が交錯する傑作短編七篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
60
ふと滲み出る情念の闇に絡め取られて淫する短編集。「悪い鏡」は「鏡地獄」、「幻鯨」は鯨版『白鯨』みたい。「浮寝の骨」は家紋が意味する事と次兄が彼に抱かれることを望んでいた妹に向けた言葉と相俟って戦慄する。「硝子のライオン」の自罰的な人生を送る女が最後に見せる狂気にも。「月下殺生」で無気力な被害者ぶった感が強い哲夫を罵倒する(名が明かされない)友人の気持ちに強く、揺さぶられてしまう。そして幼い時に仕出かした事が時を経て巡り、ほろ苦い追憶となる異色の「火藪記」にしみじみと感じ入る。2016/11/12
かがみん
2
赤江瀑の作品世界は、誰もが持つ情念の深部を感度の高い筆致で抽出増幅した世界であって、虚構にして虚構にあらず、夢幻の花でありながら、実は私たちの心の中の現実として深い酩酊感を味わわせてくれるものである。2013/08/25
MIRACLE
2
「浮寝の骨」「火藪記」が読めた。表題作の「海贄考」は結末の「考」が余分で、惜しい作品。本書では清水唯夫の解説が収穫だった。清水いわく、赤江は数多くの死を描くことで、結局のところ一つの死に至る生を語っている。そして死への過程の謎解きという形式をとることで、極めてミステリアスな空気をつくりあげる。赤江が追求する犯人は、世にいうミステリーのようなたんなる下手人ではない。死の演出者は常に人間の魂の深淵なのだ(以上、278-79頁)。下手人探しの下等なミステリーには決して真似のできない力が、赤江の作品にはある。2011/03/21
kinaba
1
冒頭の「海贄考」の「考」の部分が蛇足かどうか、自分の中で賛否がわかれてしまう。単独で見るとそれで一つ完成している世界に水を差すようだなあとも思ってしまうのだけれど、しかし、以下すべての作品を、どれだけまとまっていても別の目で見ることを強いられると考えるとなかなか。2012/12/18
丰
0
Y-202006/05/11




