内容説明
遠沢加須子は、中部光学という夫の遺したレンズ製造会社を長野県の諏訪で経営している。親会社の倒産で苦境にたった時、手をさしのべて来たのは、ハイランド光学だった。親会社の横暴に泣く下請会社の悲哀と、加須子にのびる欲望の影、そして加須子の妹の情熱が一つの悲劇を呼ぶ……諏訪湖に沈む謎は何?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井戸端アンジェリか
16
美人で未亡人おまけに会社が傾きかけているときたら、油ギッシュなオジサンたちには鴨ネギなわけだ。未亡人の方もイヤよイヤよと言いながら得しちゃうわけだ。もうこれは、将来の夢は何ですか?と聞かれたら、未亡人になりたいですと答えたいわねぜひ。 久しぶりに海外から帰国した人が、日本は何でも安いねヤバいよ、と言っていたのを思い出す。安い裏には下請けの苦悩と親会社の傲慢があるという事がよーくわかりました。でも安いと嬉しいんだよねぇ。2016/01/22
葉
4
久々に松本清張を読む。まず読み始めて2頁目に加須子が登場するが、メーミングに驚いた。未亡人という状況と、会社の存続とが入り乱れた物語。光学系の話題は個人的にあまり入ってこなかったが、会社の経営はドロドロしているのがよくわかった。下請け業者をたくさん知っているが、世知辛い世の中なのはこの当時と代わり映えしない。業界では有名とされている弓島のキャラが独特で面白かった。2018/04/16
spree
2
重い雰囲気の話でしたが、この後が、次がどうなる?と気になってしまいます。お話の終焉としてはスッキリ、ということはありませんでしたが、専務さん目線で進む話が、ある時点から「落ちて」いくと、あれもこれも負の連鎖に。こちら(読者側)もすべてを見てきた証人のように感じます。全編において「湿気」を感じる作品で、タイトルの意味がわかると怖い話でした。2018/03/13
enami7
1
ずっと積んでたこの本、ついに読み終わった! 前半ずっとカメラ会社の下請けは大変って話なので、読むのしんどいですが、弓島っていう大会社のイケメン専務がヒロインとその義妹をたらしこもうとするとこから面白くなってくる。 松本氏の描く古風で慎ましく聡い姉キャラと、ヒステリックで奔放でどうにも人間らしい義妹の対比に引き込まれるし、最後の皮肉いっぱいな展開もスゴイ。 面白かったです。2015/01/24
1goldenbatman
0
諏訪湖の湖底には、親会社からキャンセルになって廃棄するしかないレンズなどが、沈んでいるという・・・2017/08/14