ハヤカワ文庫SF<br> ジェイルバード

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ハヤカワ文庫SF
ジェイルバード

  • ISBN:9784150106300

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内容説明

ウォーターゲート事件の巻きぞえをくって囚人となったスターバックが回想する前世紀末の労働争議、サッコ=ヴァンゼッティ事件、世界大戦、赤狩り・・・・・・過去と現在が微妙に交錯しながら奏でられる八十年にわたる物語──現代アメリカ文学の巨匠が、人々への愛と怒りをこめて綴る〈新〉アメリカン・グラフィティ。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

fseigojp

24
アメリカ現代史をいきた官僚の後日談 この私小説っぽいところが後期ボネガットの魅力だなあ2016/07/06

chanvesa

23
メアリーの「アメリカ人にまだ思いやりの心のあることを、確認してほしかった(233頁)」意思、おそらく1970年代にはとうに消えてしまった感覚なのだろう。それは2020年代の日本においても、親切は公共広告機構がわざわざ話題にする対象だ。スターバックの「心の中をできるだけ空白にしていた。過去は腹立たしすぎるし、未来は恐ろしすぎるから(57頁)」ということは、現在でも共感できるかもしれない。そんな空洞の人間においても、「ハートを持った人たちが信じていたことを、信じようとした」ことにヴォネガットは望みを託した。2023/08/15

Bartleby

9
「愛は負けても、親切は勝つ。」この一節を読みたいがために手に取った。正直にいえば、ストーリーがとりわけ面白いわけじゃない。だけど、不思議な魅力がある。それは、わびしさやほろ苦さ、皮肉に満ちていながら、その根底にいつも優しさを感じさせてくれる文章だからだと思う。思ったようにいかないことだらけでも、人生はそういうもので、それはそれでしょうがない、それでいいじゃないかと、静かに肯定してくれている気がした。ピース。2012/05/03

明石

8
『チャンピオンたちの朝食』以降のヴォネガットは、すべての登場人物に平等な価値を与えることを自らの作品のアイデンティティとしていたみたいですが、今作はさすがにやり過ぎな気がした。道端で出会ったまったくの赤の他人や、カウンター越しに立つ名もなき店員の身の上話なんてわざわざ書かなくていいと思う。主人公とその周辺の何人かをより深く描いてほしいのに、話があっちこっちに飛び過ぎて注意が散漫になってしまう。ストーリー自体も『母なる夜』の焼き直しといった感じで消化不良。ところどころ垣間見えるユーモアの奇抜さは健在だけども2021/12/10

tsukamg

7
ヴォネガットは本作を、70年代の総決算と位置づけたのではないか。西暦は登場人物と同じであると宣言され、すべて漢数字で表現されている。物語上効果的であったかは疑問であるが、常に西暦を念頭において書いたであろう。70年代の作品のうち、『チャンピオンたちの朝食』で幻滅を、『スラップスティック』で理想を描いたとするならば、本作で描いたのは『現実』だろうか。ウォルターが出所してからの展開は、あえておとぎ話にすることで、現実を徹底的にこけにしているように思えた。ひどかった1970年代に落とし前をつけるかのように。2023/01/10

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