内容説明
相思相愛の野田涼太郎と初めて結ばれた翌日、なぜか吉村深美は野田の前から姿を消した。そして一年後、牡丹で知られる奈良の長谷寺の門前町・初瀬で、死体となって発見された。琵琶の撥で手首を切り、琵琶の裏甲には万葉集の恋歌三首が書き遺されていた。野田は深美の死因を求めて初瀬に赴くが、そこでみたのは不思議な無明世界であった(「春喪祭」)。耽美派の気鋭、泉鏡花賞受賞の著者が描く妖かしの世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おすし
22
どの話も絵的で妖艶。京ことばや山陰、瀬戸内の方言など話しことばが独特の空気を描いているのもすてき。『夜の藤十郎』初代坂田藤十郎の、妖し怖ろし逸話的奇譚 『春喪祭』牡丹乱れ咲く長谷寺の伽藍に琵琶の響き 『宦官の首飾り』清朝がおわり生き残りの宦官に日本人の少年が見た破滅的憧れ 『文久三年五月の手紙』文久三年の何か出来事を耽美に描いているんだと思うけど幕末に疎い私はピンと来ず… 『百幻船』船玉信仰海への畏怖。海に生きる村と女の水死体 『七夜の火』祈り殺す…祈祷致死というパワーワード。苛烈ながら華華しい結末。2024/02/14
よみとも
4
短編6編。恋人はなぜ死んだのか。牡丹咲き乱れる長谷寺を舞台にした表題作は何とも華美で幻想的「春喪祭」。まるで妖艶な歌舞伎の舞台を観るような「夜の藤十郎」。宦官と主人の秘密を覗き見る少年の昂りを玉に乗せて書いた「宦官の首飾り」。ある蔵の取り壊しに甦る過去の悲恋「文久三年5月の手紙」。人は理由があれば納得できる、それが神の祟りであっても「百幻船」。祈り殺しの「七夜の火」。いずれもねっとりとした読後感があります。夜の藤十郎が一番気に入りました。琵琶のバチと牡丹をモチーフにした表紙もよき。2024/03/25
矢代
3
……。赤江瀑を読んだのは初めてではない気がするのですが、こんな感じでしたでしょうか?ミステリ?ホラー?ちょっと不思議な感じ。それにまさかの立女形がかつての花形役者の魂?を夜鷹になって探しだすとか絡みもあるし。宦官も同性の相手をするし、宦官自体に性別を求めてはいけないのでしょうが。ラストの話なんかもう、読んで欲しい。衝撃。そっちかぁ!と思いつつ、死んで呪いをかけるという恐ろしさ。後を引きます。いやはや流石です。2014/11/18
くろねこ@2月ブクログへ移行予定
1
「七夜の火」の読後、なんだかジトーッとするような物を感じた。 この春喪祭と言う本は、全体を通して何か拭えない物があるように思えました。 これも赤江瀑という作家の魅力なのでしょうか。2021/01/12
かがみん
1
赤江瀑が彫り刻む世界は、つねに自然に反逆して、そのイメージを、いかに舞台に「実体化」させるか、という作業である。ことわるまでもないが、舞台は蠱惑的な、不思議に満ちた燃焼空間である。ここでは、事実は虚構のうちに飲み込まれ、虚構がより事実の貌にせまって歩き出す。修羅がのたうち、殺戮が繰り広げられて、少しも奇妙さを感じさせない空間である。しかし、舞台には時間と空間の制約がある。赤江文学は、その制約を逆手にねじ伏せ、時空を超えようとする、ほとんど格闘技と呼ぶべき世界である。2014/06/12
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