遠い日の戦争

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遠い日の戦争

  • 著者名:吉村昭【著】
  • 価格 ¥539(本体¥490)
  • 新潮社(2013/06発売)
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  • ISBN:9784101117164

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内容説明

終戦の詔勅が下った昭和20年8月15日、福岡の西部軍司令部の防空情報主任・清原琢也は、米兵捕虜を処刑した。無差別空襲により家族を失った日本人すべての意志の代行であるとも彼には思えた。だが、敗戦はすべての価値観を逆転させた。戦犯として断罪され、日本人の恥と罵られる中、暗く怯えに満ちた戦後の逃亡の日々が始まる――。戦争犯罪を問い、戦後日本の歪みを抉る力作長編。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yoshida

192
この作品を読むと東京裁判がただの私刑であることがよく分かる。主人公は上官の命令により、米軍捕虜を処刑する。国際法違反の捕虜殺害である。他方、米軍はどうか。日本の各都市への無差別爆撃。東京大空襲。広島と長崎への原爆投下。これは非戦闘員である一般市民の大量虐殺であり明確な国際法違反である。敗戦により一方的に裁かれる日本。また、恐ろしいのは大きく変わる日本人の価値観。敗戦により戦犯は日本人の恥とされる。主人公は逃亡の日々を送る。その後の国際情勢の変化により世論も変わる。戦後の欺瞞を知れる劇的な作品だと思うのだ。2018/05/05

いつでも母さん

128
何処までがフィクションなのだろう。間違いなくこれは『あの日』を境にして追われる身となった人間の記録だ。そしてあの頃の日本人の有り様を描いている。もし・・たら・・れば・・今更ではあるけれど、戦争犯罪人が戦争犠牲者と呼び名が変わってもやったことの事実は変わらないし、手のひらを変えねば世の中に置き去られ生き抜けない人間の心の危うさ、脆さが哀しい。280ページにも満たない文庫本がずしりと重かった。8月に読むはずが・・しかし、遅くは無い貴方も是非一読を。2017/09/01

サンダーバード@怪しいグルメ探検隊・隊鳥

118
終戦直後、米兵俘虜の処刑に加わった清原。大戦後俘虜虐待の罪を問われ戦犯として逃亡を余儀なくされる。これまで信じていた価値観が反転することへの怒りと戸惑い。迫り来る死に対する恐怖。もちろん、降伏して戦闘能力を失った俘虜を殺傷することは国際法上許されることではない。ならば、非戦闘員を大量殺戮した都市空爆は国際条例違反ではないのか?勝てば官軍、負ければ賊軍。戦争犯罪に対する裁判は私刑に近いものであると感じたとあるが、確かにその通りだと思う。感情的にならず、淡々とした筆致で綴る吉村氏の文章が心に響く。★★★★2018/07/29

ehirano1

111
名作だと思います。内容は非常に激しいのですがこれが淡々と語られ、ストーリーは静かにそして重く進行します。”正義”とは如何なるのものか?について琢也が処刑に係る時と裁判時、この二基点で強く考えさせられます。同時に、”正義”なるものには”感情”がどれくらい含まれるのか、否、どれくらい支配されているのか?についても考えさせられます。しかし今思うのはこれらに対する回答よりも寧ろ、「正義とは生々しい生き物ではないか」、ということです。2016/08/12

at-sushi@ナートゥをご存知か?

84
上官の命令に加え、無差別爆撃や原爆への復讐心も手伝い、捕虜処刑に与し戦犯として追われる身となった元日本兵。彼が目にする、僅かな間に価値観を一変させた市井の人々や、勝者による私刑に等しい極東軍事裁判のいい加減さ、部下に罪を擦り付けようとする上官達の姿は、戦後日本の原罪を見せつけられるよう。 著者にしては濃密なタッチの情景や心象描写が、息詰まる逃避行をスリリングに演出し、最後の情景の切なさが涙を誘う。文句無しの傑作。2021/05/28

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