内容説明
鋭いアイゼンの爪もよせつけない蒼氷に覆われる厳冬期、石が水平に飛ぶ台風シーズン――富士山頂の苛烈な自然を背景に、若い気象観測所員の厳しい生活と、友情と愛と死を描いて息づまる迫力をよぶ長編「蒼氷」。ヒマラヤを夢み、岩と氷壁に青春を賭けた天才クライマーが、登攀不能といわれた谷川岳衝立岩を征服するまでの闘志と情熱の半生を描く実録小説「神々の岩壁」。他に2編併録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
66
「蒼氷」は、蒼氷に覆われた厳冬期や台風シーズン等、過酷な富士山の自然に挑む若き気象観測員の厳しい生活を恋愛、友情と人の死を絡めて描いた息詰まる迫力のある作品。台風のシーンは圧巻だ。「疲労凍死」は、疲労凍死した弟の真相を探る兄の苦闘を描いた作品だが、単なる山岳小説の域を超えてサスペンス性があり、男女の人間のエゴや山の怖さが巧みに描かれていて面白かった。一番印象に残った作品。「神々の岸壁」は、ヒマラヤを夢見て岩と氷壁に青春を賭けた天才クライマーの闘志と情熱の半生を描いた実録小説。彼の生き方に心惹かれた。 2026/01/16
タツ フカガワ
51
表題2作の他、短篇2作を収録。そのなかの「疲労凍死」が面白かった。冬の八ヶ岳で弟が遭難死。死因は疲労凍死。が、所持していたノートから死の間際に書いたのであろう“ひるたにだまされた”とも読める一文が見つかる。ひるた(蛭田)とはこのとき同行していた男の名前だった……という山岳ミステリー。このほか天才クライマー南博人の半生を描いた実録小説「神々の岩壁」もよかった。2023/12/14
翔亀
46
デビュー「強力伝」とほぼ同時期に書かれた短編集(4編)。こちらは富士山、八ヶ岳、穂高岳と専ら山岳が舞台。山岳描写の厳しさと神々しさは増々磨きがかけられており、自分では絶対できないヴァーチャル登山を楽しめたが、「強力伝」がポジならこちらはネガだ。「神々の岩壁」を除いて、やたらと遭難死の場面が多いからだけではない。4編とも主人公は生き残るが、登山を突き詰めるが故に"世間的な人生"には敗北する。ここに新田さんの誠実を見ることが出来る。登山と日常は相容れない。非日常的だからこそ登山だというポリシーが貫かれるのだ。2015/07/10
としえ
20
新田次郎初読み。上下巻ある『孤高の人』を読む前に短編を、と思って借りてみたが、うーん…合わなかった。あらすじを見て、富士山頂にある気象観測所の所員・守屋達の厳しい生活を描いた話(蒼氷)と思っていたが、読むにつれて、椿理子というお嬢様に振り回される男たちの話としか思えなくなっていった。どの男性にも思わせぶりな態度を取る理子は嫌いだし、守屋や守屋に絡んでくる男たちも理子のどこに惚れているのかわからないしで結果残念な感じに。神々の~は淡々と書かれすぎていて、これまた感情移入がしにくかった。長編なら良かったかも。2016/05/19
さっと
12
作品集。「蒼氷」は最初期の作品で原題は「郷愁の富士山頂」。誠実な測候所員や豪放磊落な強力らの富士山頂の暮らしぶりは測候所勤務経験のある著者ならではのもの。今で言うあざとかわいい令嬢が山男たちを煽って次々と立つフラグにどことなく陰鬱な小説の印象だが、山頂の自然の描写は圧倒的ですべてを吹き飛ばしてくれる。「疲労凍死」は登山家に悪人なしの通説否定や、麓では些細なほつれが山では死に直結するという、著者の山モノではおなじみのエッセンスが凝縮されている。ほかに幻想的な「怪獣」と衝立山登攀の実録小説「神々の岩壁」。2023/11/05




