内容説明
頭の鉢が異常に大きく、おでこで奥眼の小坊主・堀之内慈念は寺院の内部になにを見、なにをしたか。京都の古寺、若狭の寒村、そして滋賀の古刹を舞台に、慈念の漂流がつづく。著者の体験にもとづいた怨念と、濃密な私小説的リアリティによって、純文学の域に達したミステリーである。昭和36年上期(第45回)直木賞を受賞した第一部の「雁の寺」につづく「雁の村」「雁の森」「雁の死」の四部作に新たに加筆し一冊に収めた、著者の代表作だ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
50
慈念は生涯を通して笑ったことはあったのだろうか。庫裏の生々しい情事を目の当たりにし、苦々しい気持ちで小僧を勤め、その奇妙な見てくれで誰からも好奇の眼で見つめられ、そんな中でもある種悟ったように寺の雑務、行事に没頭していた。皆から雑に扱われ疎外されてもそういうことには動じない強さがあった。慈念の心にはいつも二人の母がいた。田舎に住み貧困にあえぎながらも、愛を注いでくれた育ての母。でも産みの母の面影が慈念を悩ます。父親に対峙し真実を求めた時、悲劇が慈念を襲う。結末が悲しすぎて涙も出ない。慈念を抱きしめたい。2016/09/17
tuppo
3
しぶいけれど今の時代で読んでも楽しめる勢いある文体。2023/02/25
sensei
1
雁の襖絵のある寺の住職の失踪と、それに係る小僧の遍歴が書かれている。 2016/04/16
mimosa
0
以前テレビドラマで見たのは雁の寺までの物語で、若い僧慈念の後日談が後の三部で語られている。出生の秘密が僧侶修行中の身に常に影を落とし悲しい話しである。生まれ故郷の若狭、修行の京都や滋賀湖西の風景が趣き深い2021/12/30