内容説明
その魂の底に清らかな情熱をたたえた庶民詩人は、日本の珍書奇籍をあさって、久しく塵にまみれていた陰惨な幽霊物語に新しい生命を注入した。壇ノ浦の合戦というロマンティックな歴史的悲劇を背景に、盲目の一琵琶法師のいたましいエピソードを浮き彫りにした絶品「耳なし芳一のはなし」等芸術味豊かな42編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
86
体中に経文を書かれた芳一が耳をもぎ取られるという残酷な話が、なぜこんなに心を打つのか。それは西海に沈んでいった平家一門の哀しみに、芳一が命を張って触れていくからだ。彼は琵琶の名手であり、死者の魂に深く感応し得たのも芸術の才ゆえだろう。亡霊が呼びに来た時、甲冑の音を不吉とせず幸運の訪れと見た芳一の直感は芸術的な閃きを物語っている。盲目の彼はただ一筋の天稟に導かれ、試練を耐え抜いて芸術家として生きる道を見出していくのである。芳一の直感は闇の中に訪れた曙光。これは内なる声を信じた者の成長を描く物語なのだと思う。2014/08/10
ワッピー
54
【日本の夏は、やっぱり怪談】再読ですが、新鮮でした。大名の奥方の理不尽な嫉妬を描いた妖艶な「因果ばなし」、スプラッタな「幽霊滝の伝説」、あえて未完の「茶碗の中」、サイコパスな息子「雉子のはなし」が印象的でした。嫉妬の恐ろしさ、因果応報、命を賭して盟約を守る信義の大事さは繰り返し現れてきて、ハーンに響いたテーマだったのだのでしょう。地味な話もありますが、こういう話が西洋ではどのように受け止められたのか気になります。ひ孫にあたる小泉凡さんが書いたハーンのルーツを追う「怪談四代記 八雲のいたずら」もおススメ! 2021/07/08
nyanco
43
日本女性こそ日本の美であると日本と日本女性をこよなく愛した八雲。死んだ後も愛しい人への思いを断ち切れず亡霊となって現れるお露や、決して再婚しないと今際の際にした約束を違えた夫ではなく新妻をとり殺す先妻の怨念。従順で優しく穏やかに見える日本女性の怨、それさえも愛する人への深い思慕のなせる技と八雲には思えたのだろうか。狂おしいまでにひたむきな思いの女に反し、男達はいつも逃げ腰で簡単に約束を違え、愛した人を切り捨てる。ほんにいつの世も、殿方とは仕方のない生き物にございます。2009/09/02
拓也 ◆mOrYeBoQbw
37
古典短篇集。日本の古典を題材に、海外にも日本の古典を紹介する意味合いで書かれた幻想短篇集を再び日本語に訳したものですね。夏と言えばまずこれ!という定番ですw。『耳なし芳一』から始まって、のっぺらぼうのスタンダードになった『むじな』、日本版ドライアード譚『青柳のはなし』と、日本の古典をベースにしつつ、耽美、滑稽、妖艶、奇妙な味、と八雲が物語としての完成度を高めたのが見事ですねー。純粋に楽しんで読める古典作品だと思います(・ω・)ノシ2016/08/08
hanchyan@ふむ……いちりある
36
ちゃんと通読したのは今回が初。改めて感じたのはコレって翻訳モノだったんだ!ってことで。なにかの抜粋・抄訳その他で有名どころを幾つか読んだだけの当時「なんかピンとこないがものすごく気になるのはナゼだ!?」って疑問、その解答を得たように思いました。「『外から見られた“和”を翻訳した』“和”を読む」、なんかリサイクルマークのような、矢印付きの円環のイメージ。そこが今なお版を重ね愛読される普遍性を持つポイントかと。あと天野画伯の装画(笑)。「耳なし芳一」は殿堂入りとして、「因果ばなし」と「破約」がチョー怖い!!2014/08/14
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